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2017.8.13

デザイン領域特別客員教授木村徹氏によるワークショップ「IDOU」&公開講座「クルマは変わる」を開催しました

デザイン領域特別客員教授木村徹氏によるワークショップ「IDOU」&公開講座「クルマは変わる」を開催しました 2017年8月5日(土)、デザイン領域特別客員教授 木村徹氏によるインダストリアルデザインワークショップ「IDOU」の講評会、および、公開講座「クルマは変わる」を開催しました。 ワークショップの「IDOU」は、カーデザイン、インダストリアルデザインを学ぶ名古屋芸術大学と中部地区の大学生を対象に開催されたワークショップで、10年後に自分が使いたい移動のための道具をデザインする、という内容で8月2日〜5日に行われました。事前に申し込んだ30名が5つのグループに分かれて、未来の移動のための道具・乗り物を考えてディスカッションを行い、スケッチやモックアップを作ることで考えを視覚化しました。5日の午前中は、X棟ギャラリーにスケッチとモックアップを展示し、グループごとにプレゼンテーションを行いました。10:00の開始時間直前まで、展示を微調整したりモックアップを仕上げたりする学生の姿が見られ、短期間のワークショップならではの、密度の高さを感じました。プレゼンテーションは、グループごとに20分程度の発表を行い、質疑応答の後、木村氏が講評する形式で進められました。いずれのグループも、現在の技術をベースに10年後に発展するであろう技術を用い、現在の社会が抱える問題や課題を解決しようとする内容になっており、最大限、発想を広げたものとなりました。ユニークなアイデアや非常に大規模なインフラを整える大胆な仕組みなどの提案があり、見応えのある内容になりました。2日半という短時間のワークショップにもかかわらず、多数のスケッチ、実物サイズをイメージできるモックアップなど、力作が揃いました。木村氏は、終始にこやかに発表を聞き、豊かな発想力を高く評価するコメントをしました。参加者たちは、いずれも木村氏から薫陶を受け、晴れやかな表情を浮かべていました。木村氏は、短時間でもフルスケールでモックアップまで制作できたことは大きな意義があり、このように濃厚な時間を過ごすこと自体が今後の大きな糧になること、「移動」することは人間の本能であり、移動するという行為の意味をしっかりと捉えて欲しいということ、デザイナーにとっては夢を見ることが非常に大事であり、夢の見方を覚えて欲しい、と講評会をまとめました。また、デザインという仕事は、ストーリーを作り、夢を見てそれを形にするシンプルで楽しい仕事であり、夢を見ることがもっとも重要であると学生たちに伝えました。 午後からは、B棟大教室に場所を移し、公開講座「クルマは変わる」となりました。会場には、ワークショップに参加した学生、一般の学生に加え、自動車メーカーに勤める現役のデザイナーなど社会人も数多く来場しました。 始めに、カーデザインコースを担当する片岡教授から、カーデザインコースの概要と木村氏の紹介がありました。木村氏は、トヨタ自動車株式会社退職後、名古屋工業大学、川崎重工で重責を担ったという経歴の説明に加え、もっとも重要なこととして、公益社団法人自動車技術会にデザイン部門委員会を設立し、すべての自動車メーカーのデザイナーがつながることのできる組織を作ったと、その業績を称えました。現在も、学生や子どもたちに自動車のデザインがいかに大事なことであるかを伝える活動を続けていると紹介しました。 講演は、若い人たちに明日を考えて次世代の車がどうあるべきかを考えて欲しい、ということから始まりました。現在では、自動車産業は成熟産業と考えられており自動車はコモディティ化していくと言われていますが、そんなことはなく、エネルギーの転換期にきており自動車自体が大きく変わる時期であり、デザイナーとしてもやるべきことがたくさんあると説明しました。デザインの原点として、学生に「デザインとは何か?」という問いかけをし、孔子の論語「其れ恕(じょ)か。己の欲せざる所、人に施すこと勿かれ」を引いて、デザインは「恕=思いやり」と説明しました。レイモンド・ローウィ「Most Advanced Yet Acceptable(もっとも先進的で且つ消費者に受け入れられる)」 ミース・ファンデル・ローエ「Less is more(神は細部に宿る)」 ルイス・サリヴァン「Form follows function(形態は機能に従う)」 レクサスデザインフィロソフィー「Simplicity is not simple(簡潔であることは簡単ではない)」 アルフレッド・マーシャル「Cool heads but warm hearts(冷静な頭脳、暖かい心情)」などの言葉の意味を確認し、デザイナーが考えるべきことの要点を明らかにしていきました。内容は徐々に実践的な事柄に移り、デザイナーが考えるべき「5W2H(When、Where、Who、What、Why、How、How much)」について、「2W1H(What、Why、How)」と「3W1H」に分け、2W1Hの「テーマは何か」「テーマの理由」、この2つがプロジェクトにもっとも重要な事柄であることを説明し、Howに関してはそれぞれの企業や組織で条件が異なり、どうやって実行するかが仕事の難しさでありポイントになると説明しました。 さらに、自動車の開発史を紐解き、ガソリン自動車の誕生→高級車の思想形成→大衆化・巨大化(快適性の追求)→エコ化(持続性の追求)と歴史を捉え、この流れで自動車開発は動いており、ぜひ覚えておいて自分が自動車に携わるときに意識して欲しいと話しました。 自動車以外の分野の工業製品としてオーディオ、時計、掃除機を例に挙げて、今後の市場動向は高級品と実用品の2極化がさらに進むと説明、そのことを踏まえ、あるべき姿として未来の行き先を考え、自分が携わる商品の落としどころを探ることが肝要と説明しました。 新たなモビリティとして、走っているときと止まっているとき、それぞれに合わせて変化する形状、また、それぞれが連携してつながることのできるPCM(パーソナル・コミュニケーション・モビリティ)の概念を提案し、トヨタ自動車や川崎重工で手がけた乗り物と自身が提案したPCMとの関連を紹介して講演は終わりました。 質疑では、製品のデザインに過去の製品・オーソドックスなデザインを取り入れることについての疑問、時速300kmを上回る性能のオートバイの企画をどうやって通したか、プロダクトの2極化についてオートバイの場合はどうなるのか、などの質問が上がりました。オーソドックスなデザインについては、オーソドックスとは何を基準にしているかそのこと自体に疑問を持ってもらいたい、さらに、どんな商品であれ「驚き、慣れ、飽き」のプロセスを辿ると考えており、周期の違いがあるだけで自動車も建築もファッションも同じプロセスを辿るので、自分の位置を客観的に判断することが大切だと応えました。オートバイ市場の動向としては、専門化が進み、中途半端な製品は消えていくと考えを説明し、その上で、日本の企業は実用品を作ることは得意だが高級品を作ることが苦手、新たな価値を作っていくことが今後望まれていると応え、講義を締めくくりました。 公開講座終了後、X棟2階で懇親会が開かれました。ワークショップに参加した学生たちは、緊張が解けてリラックスした様子。講座に出席した社会人らも木村氏や本学講師たち、学生たちと和やかに談笑し、非常に有意義な懇親会となりました。 ワークショップ「IDOU」。アイデアを尊重し考えを育むことを重視する木村氏。温かなまなざし プレゼンテーションは1グループ20分程。木村氏をはじめ講師、参加者全員にグループの考えを伝える 5つのグループに分かれ、10年後の移動の道具を考案しプレゼンテーション。フルスケールのモックアップも作製 5つのグループに分かれ、10年後の移動の道具を考案しプレゼンテーション。フルスケールのモックアップも作製 5つのグループに分かれ、10年後の移動の道具を考案しプレゼンテーション。フルスケールのモックアップも作製 5つのグループに分かれ、10年後の移動の道具を考案しプレゼンテーション。フルスケールのモックアップも作製 5つのグループに分かれ、10年後の移動の道具を考案しプレゼンテーション。フルスケールのモックアップも作製 5つのグループに分かれ、10年後の移動の道具を考案しプレゼンテーション。フルスケールのモックアップも作製 デザイナーにとっては夢を見ることが非常に大事であり、夢の見方を覚えて欲しい X棟ギャラリーには、カーデザインコース1年間の成果として学生たちが制作したスケッチやモックアップも展示 X棟ギャラリーには、カーデザインコース1年間の成果として学生たちが制作したスケッチやモックアップも展示 X棟ギャラリーには、カーデザインコース1年間の成果として学生たちが制作したスケッチやモックアップも展示 X棟ギャラリーには、カーデザインコース1年間の成果として学生たちが制作したスケッチやモックアップも展示 人間発達学部の学生・卒業生、教育現場に携わる多くの方に来場いただきました 自動車の開発史を紐解く。流れを意識することが重要 あるべき姿の落としどころ。時代の流れを意識して判断することが大切と説明 質疑応答の様子。現役のデザイナーからの質問も 懇親会にて。終始、和やかな雰囲気 ワークショップに参加した学生たちもリラックスした様子