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2024.7.2

インダストリアル&セラミックデザインコース、フジプレコン株式会社様との連携、工場見学と制作を体験

インダストリアル&セラミックデザインコース、フジプレコン株式会社様との連携、工場見学と制作を体験  インダストリアル&セラミックデザインコースでは、鉄道・道路で利用される側溝や電線などを収容するトラフなど、コンクリート製品を製造する企業、 フジプレコン株式会社様と連携し、コンクリート製品を製造する過程で発生する余剰分をリサイクルした、コンクリート製のプ ロダクト制作を行っています。昨年度は、考案したアイデアをプレゼンテーション、後藤ゼミ考案の「U字溝フォントとU字溝を使った文具」(U字溝をモチーフとしてアルファベットの立体で表札やPOPなどに使用)と、小林由奈さんの「チーズスタンド」(穴に筆記用具や歯ブラシを差し込んで使うチーズ型の置物)の2つを制作することと決まりました。(→記事は)  今年度はその2案を量産化すること、さらに商品バリエーションを増やすため新たな提案を行うことを目指します。2024年6月24日(月)、プロジェクトに参加する学生は豊橋市のフジプレコン豊橋工場を訪れ、コンクリートプラントと型にコンクリートを流し込んで二次製品を作る製造現場を見学させていただきました。 こちら  はじめに、松林克法 代表取締役社長から、フジプレコンの会社概要について説明していただきました。フジプレコンは鉄道製品が主力で線路脇の配線などを収納する側溝、遮断機などの基礎、また雑草対策のコンクリートマットなど、社会インフラにかかわる製品を数多く製造しています。SDGsにも積極的に取り組み、コンクリートを切断する際に発生する粉じんの問題、製造プロセスから炭素を出さない低炭素コンクリートの開発など、2042年のカーボンフリー化を目標に進めているといいます。  続いて、製造部の伊藤知美さんから、コンクリートの材料や成分、特徴などについて説明していただきました。コンクリートはセメントと水に「骨材」(砂利や砂など)を混ぜたもので、骨材がコンクリートの7割を占めているとのこと。骨材の分量と粒の大きさ、また、鉄筋など補強材の有無で強度など性質が変わり、用途に合わせて作り分けているとのことです。  次に、実際に工場を見せていただきました。まずは、コンクリートプラント。保管されている各種骨材がベルトコンベアで運ばれ、セメントと水を加え混ぜ合わせてコンクリートを作ります。計量などコンピュータで管理され、できあがったコンクリートはすぐに二次製品の製造ヤードへ運ばれます。ここで問題になるのが余剰コンクリート。コンクリートプラントの最下部にコンテナが置かれ、そこに余剰分のコンクリートが溜まります。1日に1トンほどの余剰が発生してしまうとのことで、これを活用しようというのがこのプロジェクトの目的です。二次製品の製造現場、また製品置き場では、その数量が印象的です。さまざまな形と大きさのコンクリート製品を製造していることがわかります。いずれも型を用意してそこへ流し込み固めるのですが、膨大な種類が用意されています。型に流し込んだコンクリートは、焼き物のように縮むこともなくそのままの形で凝固することも、よく理解できました。  工場見学の後、今度は実際にサンプル造りを体験しました。製造部 伊藤さんの指導の下、型にコンクリートを流し込みました。フジプレコンが運営するで販売されている、プレコンキューブと盆景プランター “ienami”の型を使います。  はじめに型をバラして丁寧に掃除し、隙間ができないようにしっかりと組み立てます。そこへ離型剤をスプレーして準備完了、コンクリートを流し込みます。流し込んだあと、軽くハンマーで振動を加えると、なかに含まれていた空気が泡として浮かびます。それらを取り除き、固まったら取り出します。固まるまで一昼夜かかるので体験はここまででしたが、固まったら取りだしバリを取り、表面をサンドペーパーで仕上げて完成となります。 PRECONSHOP  学生らは、今後3Dプリンターを使い「U字溝フォント」の原型を作ることになっていますが、伊藤さんがサンプルに作った「チーズスタンド」を見せていただきながら、原型を作るときの注意点を伺いました。チーズスタンドは、原型を基に伊藤さんがシリコンで型を取って作ったもの。穴の部分が難しいとのことで、コンクリートから引き抜くときに抜きやすいようテーパー(先細りになるよう傾斜)を付けて欲しい、外観部分はシリコン型を割って取り出せばよいのでどんな形でも大丈夫、と説明を受けました。これらを反映して、学生らは3DプリンターでU字溝フォントの原型を設計することとなりました。  伊藤さんの「コンクリートに触れてもらい、学生さんたちに素材として親しみを持ってもらえたら」という言葉が印象的でした。今後、もう少し製品種類を増やしたいと松林克法 代表取締役社長からの要望もあり、新しい提案も含めたくさんの課題が見えた実りの多い工場見学となりました。

2024.6.13

テキスタイルデザインコース、尾州フェスにて作品を展示する「一宮モーニング」プロジェクト、キックオフ

テキスタイルデザインコース、尾州フェスにて作品を展示する「一宮モーニング」プロジェクト、キックオフ  テキスタイルデザインコースでは、一宮市から依頼を受け尾州産地の魅力をアピールするファッション・アートイベント「BISHU FES.」に参加。関連イベントである「まちなかアート展示」に、一宮モーニングをテーマに作品を制作し、本町通り商店街に展示します。  2024年6月3日(月)、プロジェクトに参加する学生は、キックオフとして一宮市役所を訪れBISHU FES.の概要、さらに一宮モーニング協議会から一宮モーニングについてのお話を伺い、作品の展示場所となる本町商店街を確認。さらに一宮モーニングのリサーチと、作品制作に向けて精力的に活動を開始しました。  プロジェクトには有志の学生7名が参加、いずれも尾州の繊維産業に関心を持つ学生です。はじめに一宮市役所で、産業振興課 鈴木課長、産業振興課 佐藤さんからBISHU FES.とまちなかアート展示についてお伺いしました。「今回の企画は、皆さんの尾州織物を使った作品を展示していただきたいと立ち上げたものです。一宮モーニングをテーマにイメージを膨らませて作品にしていただきたいと思います。良い作品ができるようサポートしていきたいと思います」とお話がありました。  引き続き、一宮商工会議所 企画事業部 西脇豊さんから、一宮モーニング協議会の活動についてお話しいただきました。一宮モーニングは、昭和30年代、織機の音が大きくて店では商談ができなかった機屋さんが喫茶店で商談するようになり、そうした中から生まれてきたサービスである、とモーニングの歴史からはじまりました。現在では、一宮市内に520店舗もの喫茶店があり、休日には朝食代わりに家族でモーニングを食べに喫茶店へ通う文化があるといいます。こうした身近な文化を背景に一宮商工会議所青年部が中心となり一宮モーニング協議会を発足、平成28年に「一宮モーニング」を地域団体商標へ登録して地域の知名度の向上と活性化を目標に活動しています。昨年は「2023年度 知財功労賞 特許庁長官表彰」を受賞するなど、地域ブランディングや観光事業として進められています。一宮モーニング協議会では、毎年、加盟する喫茶店を紹介する「一宮モーニングマップ」を制作、また、モーニングを盛り上げるイベントや異業種との連携、写真コンテストなど、さまざまな活動を行っており、それらの取り組みを紹介していただきました。  学生たちへ作品を作る上で気を付けて欲しいこととして「モーニングというとお得感や、この値段でこれだけのサービス、といった表現になりがちです。ですが、お店もぎりぎりのところでサービスを続けているので、競争や煽るようなことは避けて欲しいです。協議会ではお店のメリットになることを第一に考えています。そうしたところに気を付けて制作をお願いします」とお話がありました。また、一宮モーニング三ヶ条として、「一宮市内のお店であること」「たまご料理が付いていること」「できるだけ一宮産の食材を使うこと」の3項目を説明し、制作のヒントにして下さいと説明しました。  ミーティングの後、学生たちは実際に本町商店街に赴き、展示場所を確認しました。展示場所は、2022年の「」でも展示のポイントとなった、アーケード中心部のドーム部分。作品の大きさや、わかりやすいデザインが求められることなど、あらためて作品の基本的な部分を確認しました。  展示場所を確認した後は、リサーチのために一宮モーニングを体験しました。モーニング協議会の西脇さんに、夕方までモーニングを提供しているお店(笑)をご紹介いただき、皆で伺いました。メニューには、パンだけでなくおにぎりやたまごかけご飯、カレーライスまでモーニングのサービスにあり、それだけで大いに盛り上がります。小倉トーストやサンドイッチなどのサービスを楽しみながら、その特徴を理解しました。モーニングサービスは、出てきたときのボリュームや楽しさからか、なぜだか元気の出てくるサービスだと、あらためて気付かされました。  モーニングの楽しさ嬉しさが織物でどう表現されるか、ご期待下さい。 いちのみや芸術商店街

2024.6.5

テキスタイルデザインコース 有松絞りまつりでオリジナル手ぬぐいを販売、好評を博しました

テキスタイルデザインコース 有松絞りまつりでオリジナル手ぬぐいを販売、好評を博しました  テキスタイルデザインコースは、2024年6月1日(土)、2日(日)の二日間、「有松絞り手ぬぐいブランドプロジェクト」として有松絞りまつりに販売ブースを設け、学生がデザインし染色した手ぬぐいを販売、好評を博しました。  テキスタイルデザインコースでは、2009年から有松絞り産地と産学連携授業を実施、絞りの技法を学び、手ぬぐいをブランドの商品と見立てブランドイメージに合わせてデザインし制作、販売ブースは販売方法、包装やショッパーなども考え、実際に販売するという実践的な課題です。今年度は、「BLUEM」「お結び」「feeL」という3つのブランドを立ち上げました。  「BLUEM」は、青を基調としつつ、花が咲くことを表す“BLOOM”を合わせたスタイリッシュなイメージ、「お結び」は、人・文化・想いを結び付ける和食や日本文化がテーマ、「feeL」は色から感じる感情をテーマにしたカラフルな色合いの商品となっています。手ぬぐいのほか、同じデザインのアクセサリーや巾着袋など、ブランドごとに小物も販売します(→)。  販売ブースは、このプロジェクトで例年お世話になっているSuzusanが手がけるスーベニアブランドの「tetof 1608」の隣のスペースと好立地。また、やはり例年、染色でお世話になる「張正」さんの店舗でも販売させていただきました。また、今年からは張正さんの豆絞り手ぬぐいのB反(染めむらなどちょっとした難点のある二級品)にさらに模様を加えたアップサイクル商品も併せて販売しました(→)。 記事はこちら 記事はこちら  コロナ禍を経て多くの人が訪れる有松絞りまつりですが、今年40回目を数え特別なプログラムもあり、これまでにないほどの人出となりました。土曜日の午前中から、子どもを連れたファミリー層や浴衣のカップルを見かけることが多くなり、また、キッチンカーや屋台村の出店もあり、年に一度のお祭りイベントとして認知されてきたことを感じさせます。これまでは、端切れを求める“絞りファン”といったお客さんが中心でしたが、徐々に変わりつつあるという印象です。  販売ブースでは、開店と同時に調子よく売れていきます。1,800円という手ぬぐいとして他のショップと同等以上の価格設定ですが、足を止め商品を手に取る方がたくさんいらっしゃいました。中には、毎年買いに来るというお客さんもおられ、何枚もお買い上げいただいくこともありました。巾着袋も好評で、午前中に売り切れてしまったものもあるほど人気となりました。  メインの古い町並みから離れた張正さんの店舗には、張正ファンの目の肥えたお客さんがたくさん訪れます。こちらでは、板締めで藍色単色の商品と豆絞りのアップサイクル商品を販売します。学生たちはお客さんに声をかけ自分で染めたことやデザインのモチーフなどを説明、納得して非常に喜ばれていました。こちらでは通常の板締め絞りとは一風異なった学生の個性がよく表れたものが人気となりました 。売れ方を見ていると、お客さんと会話が弾み作品の背景を理解していただいたものがやはりよく売れます。商品の魅力もさることながら、商品の背景にあるストーリーや考え方が売れ行きにかかわるということを実感しました。  絞りまつりでは、テキスタイルデザインコース卒業生もさまざまな場所で出展、活躍しました。絞りの実習でもお世話になる「まり木綿」は、販売店舗を一旦閉め、工房での販売を強化するとのこと。店舗で販売する絞りまつりは今回が最後となり、惜しむようにたくさんのお客さんが訪れていました。  また、昨年に続き、今年も泉奈穂さんのブランド「」が旧山田薬局のA STORE HOUSEにて出店、こちらも人気を博していました。 Samio  2日目の日曜日は生憎の雨となりましたが、学生ブランドの「feeL」は完売、「お結び」「BLUEM」も概ね売り切ることとなりました。自分が作ったものをお客さんの手にとってもらうまでを体験する、プロジェクトを締めくくる有意義なものとなりました。 A STORE HOUSE まり木綿 張正

2024.6.5

カーデザインコース、朝日電装株式会社様と連携、新しい2輪車の操作系デザインを考えるプロジェクト、キックオフ

カーデザインコース、朝日電装株式会社様と連携、新しい2輪車の操作系デザインを考えるプロジェクト、キックオフ  カーデザインコースでは、オートバイや水上バイクなどで使用されるハンドルスイッチを製造する朝日電装株式会社様と連携し、「2輪車における新しいインターフェース」というテーマでプロジェクトを行います。2024年5月23日(木)、プロジェクトキックオフとして、朝日電装から製品開発に携わる水野孝義さん、水野直紀さん、三浦誠さんの3氏をお迎えし、2輪車、3輪車、電動キックボードの実車、操作スイッチのサンプルとして2輪車、4輪バギー、水上バイク、船舶用などをお持ちいただきました。プロジェクトの概要と目的、基本的な2輪車の実情をお話しいただき、電動キックボードの試乗体験も行いました。  プロジェクトには、カーデザインコースの3年生12名が参加。8月1日の最終プレゼンテーションに向け、約2ヶ月の間にアイデア出しからモデリングまでを行うスケジュールです。朝日電装の水野孝義さんは「魅力的なアイデアがあれば共同開発を進めさせていただき、来年のジャパンモビリティショーに出品して世に問いたい!」と意気込みを語り、夢のあるプロジェクトであることを強調しました。  朝日電装株式会社の紹介と、学生の自己紹介から講義が始まりました。お越しいただいた水野直紀さんは電気とメカ混合設計が専門、三浦誠さんは電子スイッチを使いゲームコントローラーを制作する新しいもの好きの技術者です。そして水野孝義さんは長年バイクの設計を行っていた技術者で、多くのバイクを手がけていらっしゃいます。  朝日電装については、ヤマハをはじめ、スズキ、ホンダ、カワサキといったバイクメーカーと深い関わりがあり、2輪車・自動車・特機(農機・建機)・船舶(ボート・水上バイク)等の分野で、操作する人と乗り物のインターフェースを設計、製造、販売しています。会社設立当初からヤマハのオートバイのスイッチを手がけており、1950年代のオートバイのハンドル部分の写真を掲示し、この頃から操作系の基本形態は大きくは変わっていないと説明がありました。但しスロットルに関して、技術的にはワイヤーを使って接続していたメカニカル方式から、センサー技術を活用した(APS:アクセルポジションセンサー)電子スロットル方式へと変わってきており、現在では設計自由度もかなり高くなっているとのことです。  バイクに乗っている、あるいは、乗っていたことのある人という問いかけに、経験のある学生は1名だけでした。そのため、バイクについての基本的な講義から始まりました。まずは2輪車の種類について、縦軸に実用性、横軸に乗り味を置き、実用性が低くスポーティな乗り味のスーパースポーツやカフェレーサー、逆に実用性が高く乗り味がのんびりとしたものがスクーターやビジネスバイクと区分し、アメリカン、ネイキッド、ツアラー、オフロード、スクランブラー、アドベンチャー、ストリートなど、現状のバイクの区分についても紹介し、それぞれの乗り方について運転姿勢を解説しました。  操作することを、五感から受けた感覚を脳で判断し意志や感情に従って操作するという視点で分析し、バイクの操作系インターフェースが過去から変わっていない理由について考察が行われました。さらに、4輪ある自動車との操作の違いを意識し、考えを深めました。また、バイクと同じようにハンドル部分で操作する4輪バギーや水上バイクの操作系を説明し、バイクとの違いについても考えました。4輪バギーは親指でスロットルレバーを操作し、水上バイクは自転車のブレーキのように人差し指・中指でスロットルレバーを操作します。学生らは、用意されたサンプルを手に取り、なぜバイクと異なる操作系なのか、どういった状況で使う乗り物かを考察し、ディスカッションを行いました。  後半では、電動キックボードの試乗を行いました。今回用意いただいた電動キックボードは、親指でスロットルレバーを操作するタイプでした。学生たちは実際に運転して操作系を体感し、乗り物の楽しさと同時に、普段何気なく使っている道具と身体のかかわりを考え直す有意義な試乗会となりました。  再び教室に戻るとディスカッションを再開し、忌憚のない意見交換が行われました。サンプルのスイッチの感触を確かめたり、2輪車に跨がってみてグリップを握ってみたりする中で、それぞれがインターフェースについての考えを深めました。小柄な女性では、現状のバイクの操作系でも扱いづらいことが分かるなど、さまざまな発見もありました。  今回の講義のまとめとして、水野孝義さんから「2輪車のインターフェースをあらためて考え直す」「運転して楽しい、気持ちいい、新しいを提案」「デザインの力で新しいものへと進化させて欲しい」「APSの活用」「良い提案は共同開発としてジャパンモビリティショーに出品して世に広めたい」との言葉があり、プロジェクトキックオフは終了となりました。  次週からはアイデア出しを開始し、定期的に朝日電装様にも参加いただきながら、8月の最終プレゼンテーションまで進めていくことになります。

2024.5.14

先端メディア表現コース 空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」体験会と特別講義を実施

先端メディア表現コース 空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」体験会と特別講義を実施  2024年5月7日(火)、先端メディア表現コースでは、VR/ARコンテンツの企画・制作・運用を行うイクスアール株式会社 代表の蟹江真氏をお招きし、この2024年2月にアメリカで発売されたばかりの空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」をお持ちいただき、体験会と“XR”についての特別講義を行っていただきました。先端メディア表現コースの学生、メディアデザインの院生、またデバイスに関心のある講師も新しいデバイスを体験しました。  はじめに、蟹江氏が自己紹介と「XR講習 ~XRの初歩と今~」という題目でお話しいただきました。イクスアール株式会社は、これまでバーチャルトレーニングシミュレーター、産業向け実践教育XRなどヘッドセットを使ったコンテンツを企画制作してきた企業。代表の蟹江氏は、2014年に初めてゴーグルを使ったVR(仮想現実)を体験、仕事にしたいと感じ個人会社を設立、プロジェクトを立ち上げアイドルの撮影などさまざまなコンテンツを制作してきたといいます。マイクロソフトのHoloLensというシースルーのヘッドセットを使い、製造業や教育現場の作業手順やトレーニングを行うサービスの提供を行い、これまで本を読みイメージすることしかできなかったトレーニング環境を体験的に学べるようにしたり、現場でマニュアルやチェックシートを見ながら確認できるようにするなど、ヘッドセットを実社会で活用するような業務を行っています。  今回は、イクスアール株式会社から、まだ日本で発売されていない「Apple Vision Pro」を2台、さらに2023年10月に発売された「Meta Quest 3」も併せてお持ちいただきました。Apple Vision Proは購入のため蟹江氏がアメリカまで赴き入手した国内ではまだ貴重ものです。「XR」についての講義では、これまでの仮想現実と端末の進歩を簡単に説明していただきました。XR前提として、まず現実の世界RE(REAL ENVIROMENT)があり、そこにスマートフォンやタブレット、グラス型などの機器をつかい情報を付け加えて見せるAR(AUGMENTED REALITY 拡張現実)、逆に仮想の世界に現実のものを付け加えたAV(AUGMENTED VIRTUALITY 拡張仮想)、すべてが人工のVR(VIRTUAL REALITY 人工(仮想)現実)の4つがあり、仮想と現実を混在させるARとAVがMR(MIXED REALITY 複合現実)に分類されます。MRは仮想の世界に閉じるのではなく現実の世界と融合した世界であり、MRと仮想世界のVRをまとめ、現実では知覚できない新たな体験を創る技術の総称が、XR(EXTENDED REALITY)であると説明します。コンピューティングの進化とともに伸びてきた歴史があり、今後、さらに発展が見込まれれ、その最先端にあるのが現状ではApple Vision Proということです。  体験会では参加した学生がかわるがわるヘッドセットを装着、使用感を確認しました。視線の動きがカーソルになるためセットアップに手間がかかりますが、操作自体はAppleらしいインターフェースで使いやすく、ヘッドセットに慣れた学生は違和感なく使い始めていました。まだ利用できるアプリが少ないため、3Dフォトや動画を確認したり、ブラウザを操作する程度にとどまりましたが、操作のしやすさや画面の美しさや見やすさに可能性を感じるという声が聞かれました。また、Meta Quest 3も併せて起動し、使い勝手の違いを確認しました。先端メディア表現コースには、現在2台のMeta Quest 2があり自由につかえるようにしてありますが、新しいMeta Quest 3を体験した学生からは解像度に驚きの声が上がり、こちらも有意義なものとなりました。  今のところ、産業用の用途のほか、メタバースやゲームなどでコミュニケーションツールとして使われることの多いこうした機器ですが、新たな用途での可能性を感じさせる体験会と特別講義になりました。

2024.4.26

デザイン領域 中部文具工業協同組合「2024 文具デザインプロジェクト」キックオフ 説明会を開催、課題を発表

デザイン領域 中部文具工業協同組合「2024 文具デザインプロジェクト」キックオフ 説明会を開催、課題を発表  2024年4月10日(水)、デザイン領域と中部文具工業協同組合加盟の文具メーカーとの産学連携企画「2024 文具デザインプロジェクト」のキックオフミーティングとして、シヤチハタ株式会社様から、商品企画部 滝沢一部長、田中絵里香課長、入江弘士郞さん、森松株式会社様から 森直樹 代表をお招きし、説明会を開催しました。  文具デザインプロジェクトは例年行われているもので、3年次までに習得したデザイン技術や知識を用い、商品や製品の企画、調査、開発、製造、販売までを見据えデザイン提案を行うもの。実際にこれまでの優秀作品が製品化されたこともあり、学生はもちろん企業にとっても非常に大きな意味を持つプロジェクトです。インダストリアル&セラミックデザインコース、カーデザインコース、大学院から13名の学生、院生が参加、シヤチハタ株式会社、森松株式会社、2社それぞれの課題にデザインを提案することとなります。  課題の発表に先立ち、担当する三枝樹成昭 非常勤講師からプロジェクトについての説明がありました。  「シナリオ、コンセプト、詳細デザイン、そして最終デザインと、一連のプロセスと商品化とへの流れ中で、それぞれに企業様からフィードバックを受けながら進めて行きたいと思います。ユーザーシナリオを考えて、誰がどのようなシチュエーションでどう使うのか、そういったことをきっちり説明ができるような商品提案をしていただきたいと思います」と説明しました。  続いて、森松株式会社 森社長から、課題の発表と会社の紹介がありました。課題は「まもる・保護する+◯◯」。森松株式会社は、塩化ビニールシートを使ったデスクマットやコロナ対策のパーティションなど樹脂製品の製造を行う会社。ファイルケースやカバーなど収納や保護に使うオリジナル商品もありますが、そこになにかプラスアルファの機能を提案して欲しい、と説明しました。  シヤチハタ株式会社からは、商品企画部 滝沢部長から会社の概要、入江さんから課題の説明、田中さんから過去の優秀作品の紹介がありました。課題は「〇〇な仕事の人/〇〇な趣味がある人に役立つスタンプ・筆記具」。学生らに、アルバイト先での困りごと、趣味で何かしているときにあったら便利なものなど、ユーザーとして自分のことを想像してみて、アイデアにつなげて欲しいと説明しました。  課題の説明のあと今度は学生が、アルバイトや今はまっている趣味についてなど自校紹介を行いました。打ち解けてきたところで、シヤチハタ 入江さん、田中さん、森松 森社長が自社のサンプルを手に各テーブルを回り、学生からの質問に答えたり、アイデアについて談笑しました。その場から学生はアイデアスケッチを始め、プロジェクトが本格的にスタートとなりました。  今後、両企業のご担当の方には、隔週で学校にお越しいただき学生からの相談や進捗を確認、6月5日に最終プレゼンテーションとなります。2ヶ月間という短いスケジュールですが、今年はどんなアイデアが提案されるか、期待が高まります。

2024.4.17

テキスタイルデザインコース、有松・鳴海絞り「張正」とのコラボ商品 デザインを決定

テキスタイルデザインコース、有松・鳴海絞り「張正」とのコラボ商品 デザインを決定  テキスタイルデザインコースでは、有松・鳴海絞りの張正さんとコラボレーションし、伝統の「豆絞り」を使った作品を制作「有松絞りまつり」にて販売を行います。張正さんの豆絞りB反(染めむらなどちょっとした難点のある二級品)を使い、学生が板締め絞りで模様を加えアップサイクル商品とします。有志6名の学生が有松にてサンプル品を制作しましたが、その中から商品化するデザインを選定しました。制作されたサンプルはひとり10種類。2024年4月9日(火)、60種類の手ぬぐいサンプルを持ち寄り、テキスタイル工房に集まりました。  有志の学生は、清水咲和さん、鈴木心彩紀さん、中島成美さん、深草穂華さん、水谷茉優さん、山本舞瑠さんの6名(中島さんはこの日お休み)。それぞれ制作した10のサンプルを壁に貼り、デザインを検討しました。サンプルの制作は張正さんにて行い、豆絞りと同じ色合いになるように同じ染料の濃淡2種類を使って制作したもの。色味が合っているだけありベースの豆絞りとよく合い、どれも素晴らしい出来映えです。どれも商品として十分魅力的に思えますが、そこからまずひとり2点を選出します。デザインのユニークさはもちろん、ほかとの兼ね合い、商品化するための再現性などを考慮した上で、学生それぞれのお気に入りや思い入れを聞き選択していきます。  都合12枚を選び、さらにここから半分の6枚に絞り込み商品とします。12枚を並べて壁に貼り、検討を重ねます。「張正さんの伝統の雪花絞りも入れたいし……」「これとこれはデザインが似てるからどっちかで」「男性にアピールできるのも欲しいし……」と、それぞれに意見を出しながらじっくり選びます。バルク生産(アパレル業界ではサンプルではなく本生産の意)すること、学生が卒業してしまっても後輩が指示書から再現できることも念頭に選びます。最終的は、商品としてのバリエーション、安定して作ることできることを重視しつつ、それぞれの個性や思い入れのあるものが選ばれました。  プロジェクトの感想を聞くと「家族にサンプルを見せたんですけど、これが一番かわいいっておばあちゃんが言ってくれたデザインが選ばれました」(清水)、「いままでの授業では、板締めじゃないものばかり染めていたんですよ。バルク染色では、ちゃんと柄が出るかドキドキです。一番好きな柄が選ばれてうれしいです」(深草)、「これまで花柄とか作ることが多かったので、ちょっと違うものが選ばれびっくりしてます。評判良くてうれしいです」(山本)、「張正さんで豆絞りのお話を聞いて、かわいいだけじゃなく長い歴史があるんだなとわかりました。自分の柄を加えることで、豆絞りの印象が崩れないようにデザインを考えました」(鈴木)、「畳み方とかいろいろ考えました。選んでもらったデザインも、もっと自分でアレンジして新しいものができないかと考えてます。とても良い経験になりました」(水谷)と選考にも出来映えにも充実した感想が聞かれました。また、なにより学生たちが楽しみながら制作したことが伝わってきました。  この後、2024年4月末に商品を制作、2024年6月1日、2日の有松絞りまつりでの販売となります。恒例のテキスタイルデザインコース 有松絞り手ぬぐいブランドプロジェクトと併せ、ぜひ有松絞りまつりへお運び下さい。

2024.4.17

テキスタイルデザインコース 春の恒例、羊の毛刈り体験を実施

テキスタイルデザインコース 春の恒例、羊の毛刈り体験を実施  2024年4月10日、テキスタイルデザインコースでは、恒例の授業、羊の毛刈り体験を行いました。テキスタイルデザインコースでは、布を織るための糸の素材として羊毛や綿などを体験的に学び、素材の特質や特徴について理解を深める授業を行っています。羊の毛刈りはその一回目の授業であり、例年、テキスタイルコースを選択した2年生が4月に受けることになります。今年も、愛知牧場から羊飼いの丸岡圭一さん、堀田雅人さん、そして羊のニコちゃん(雌、1歳)を西キャンパス クローバー畑にお招きし、毛刈りを体験させていただきました。  軽トラックで学内にやってくると、ニコちゃんの鳴き声に誘われるように学生が集まります。テキスタイルコースの2学生だけでなく、先輩である3、4年生、他のコースの学生、手の空いている大学職員も見学に訪れます。  はじめに、羊飼いの堀田さんからニコちゃんについての説明がありました。ニコちゃんは、昨年、毛刈りに来てくれたダディ君の娘であり、今回の毛刈りが生まれて初めてとのこと。簡単に刈り取り方の説明があり、毛刈りが始まりました。学生は順番にはさみを手に、ひとつまみずつ毛を刈り取っていきます。おぼつかない手で毛をより分けカットします。ニコちゃんはおとなしくしていますがもがくように動くとびっくり、見守る学生からも思わず笑みがこぼれます。学生たちは、刈った毛を手にふわふわの手触りを楽しんだり、匂いを確かめてみたり、それぞれに素材を実感しました。  刈り取った毛は10cmほど長さ、真ん中あたりに線が入るように色が変わっています。堀田さんによれば、これは木の年輪のようなもので、羊の1年間の生活が記録されているとのこと。ニコちゃんの場合は初めての毛刈りであり、毛の先端が丸まって固まっている部分もあります。これは、ミルキーチップといわれるもので、母羊のお腹の中にいたとき羊水に浸っていたため毛が固まったものなのだそう。真ん中の線は、夏が終わり冬のための毛に変わる部分ということです。また、毛を触っていると脂分があり、指先がすこししっとりとします。これは、羊毛に付着しているラノリンという油脂で、化粧品や医薬品のベースなどに使われています。  学生たちからは、早くも質問が挙がります。ニコちゃんの名前の由来は? なんていう種類の羊? クローバーを食べてるけど普段はどんなものを食べているの? 毛を刈るのはどうして? と興味津々。堀田さんは、丁寧に答えつつ、羊は人間によって毛を取るために作られた動物で、人間が毛を刈らないと生きていけない存在、野生の羊はいないと説明します。また、繊維全体を考えたとき羊毛の生産量はわずか1.3%、日本は一人あたりのウール消費量が世界一で、世界一ウール好きにもかかわらず国産の羊毛はほとんどない、というウールをめぐる現状の課題なども教えていただきました。  一旦、質疑を中断して、バリカンで羊全体の毛を刈ります。堀田さんがニコちゃんを座らせ抱きかかえるようにして刈っていく様子を皆で見守りました。おなか、左からおしり、次に頭から服を脱がせるようにひとつながりになるように刈っていきます。  刈り終わると堀田さんは、一枚につながった毛を示し、この状態をフリースといい、よく知っているフリースジャケットの語源になっていると説明します。羊毛は、部分により品質が異なり、肩のあたりは柔らかく、おしりのあたりは硬くなっており、用途によって使い分けるのが良いといいます。堀田さんが自身で使っている羊毛でできた手紡ぎ手編みのベストとスヌードを見せ、どの羊の毛から作ったものかわかるようになっていると紹介、ベストはごばんくんという羊、スヌードはオレオさんとのことです。Instagramで、「#ごばん200411」、「#オレオ170202」で検索すると、生育状況などトレースできるように考えられています。ニコちゃんのタグは、「#ニコ230322」で、作品を作ったときには、ぜひハッシュタグを付けて投稿して欲しいと説明しました。  担当する貝塚惇観講師からは「ウールは呼吸をする繊維で、水分が多いと吸収し、乾燥してくると保湿するようになります。気候や気温によって良い具合に変化する、素材が生きているということが大きな特長だと思います。化学繊維では同じようなことはまだできていなくて、羊毛は特別な素材であり、そうした素材の特性を知ることで制作するものが変わってきます」と説明。併せて、国産の羊毛を使っていこうというジャパンウールプロジェクトに授業で参加するとが告げられました。「今年は羊毛についてしっかり学ぶ機会があります」とまとめ、授業は終了となりました。素材の源流を知る、貴重な体験となりました。

2024.4.8

テキスタイルデザインコース、有松・鳴海絞り「張正」とコラボレーション、豆絞りB反をアップサイクルし商品化へ

テキスタイルデザインコース、有松・鳴海絞り「張正」とコラボレーション、豆絞りB反をアップサイクルし商品化へ  テキスタイルデザインコースでは、有松・鳴海絞りの張正さんとコラボレーションし、伝統の「豆絞り」を使った作品を制作し例年出店している「有松絞りまつり」にて販売を行います。加えて、レギュラー商品として通年販売できるよう商品化を目指しています。  張正さんの豆絞りは、江戸時代から続くドット模様の伝統的な絵柄。生産の過程で出たB反(染めむらなどちょっとした難点のある二級品)を活用し、豆絞りの柄と重ねるように染めを加えて作品を作ります。2021年に開催された「KOUGEI EXPO IN AICHI」でも同様の作品を制作、好評を博しました。今回は、その第2弾ともいうべきプロジェクト。前回は、豆絞りにシルクスクリーンプリントを加えた作品を制作しましたが、今回は板締め絞り(布を2枚の板の間に挟み強く締め、染料の浸透を防いで模様を染め出す染色法)で幾何学模様を加えるという贅沢さ。テキスタイルデザインコース3年生6名の学生が参加しました。  2024年4月2日(火)、学生らはあらかじめB反の手ぬぐいをすぐ染色できるよう折りたたんだ状態まで準備し、有松駅近くの張正さん店舗に集まりました。定番の正三角形をはじめ、四角形、布がはみだすようにたたんだもの、割り箸で挟んだものなど、さまざまなバリエーションのものを一人10通り、制作してきています。それぞれが10種類のサンプルを制作し、その中からひとつを選び6名で6種類の商品を作ることになります。  染色する前に、店舗で張正の鵜飼小百合さんから、豆絞りの歴史についてお話を伺いました。  張正さんの豆絞りは、江戸時代から続く伝統的な絵柄ですが、第二次世界大戦によって手作りの制作方法が失われた後に、張正さんの先代、先々代が研究を重ね復活させたもの。江戸時代の浮世絵を参考に再現する方法を研究、たまたま知多の海水浴場に行った先々代が、豆絞りの手ぬぐいを持っている人を見つけ、初めて豆絞りの実物を手に取ることができ、試行錯誤の末に実現したとのこと。量産することも見据えての再現だったこともあり、じつに5年もの歳月がかかったといいます。  現在でも豆絞りは、布の変化もあり、決して歩留まりが良いわけではなく、たくさんのB反が出てしまうとのことです。日本で唯一絞りで再現しているということ、また、納得できるクオリティでなければ商品としない職人としての誇りを、あらためて感じさせます。  お話のあと、張正さんの染色工場へ移動し、染めの作業を行いました。鵜飼敬一さんの指導のもと、浸染(布を染料溶液に浸して染める方法)で染めていきます。今回の制作は商品化を目指すということで、学生それぞれが布のたたみ方とどの部分にどれくらい色を入れたか、制作のレシピを克明に記録、制作する人が変わっても同じような柄を作ることができるようにしていきます。  3年生の学生は、これまでに何度も手ぬぐいの制作を経験しており、作業自体は慣れたもの。スムーズにそれぞれが10種類の柄を染め上げました。できあがったサンプルは、いずれのサンプルも豆絞りの柄とマッチしどれも魅力的。商品化するものを選ぶのがうれしい悩みになりそうな素晴らしい出来映えで、商品化への期待も高まります。  学生からは「豆絞りの柄をどう活かせばいいか、丸みにあわせようかとか、いろいろデザインを考えました。絞りをベースに考えることが貴重な経験になりました」「これまで白地に染めたことしかないので、出来上がりを見て印象が想像と違い、面白いなと思いました」「絞りの歴史を聞いて、学ぶことが多かったです」「自分が考えていたことに作業するとき少しアレンジを加えて楽しんで制作できました」「豆絞りの歴史を知ったこと良かったです。柄を重ねることで印象が変わって面白いと感じました」との声が聞かれ、絞りの技術と歴史の面白さをあらためて感じた様子でした。  今後は、サンプルを持ち帰り商品化するデザインを選び、4月末に商品を制作、2024年6月1日、2日の有松絞りまつりでの販売となります。恒例のテキスタイルデザインコース 有松絞り手ぬぐいブランドプロジェクトと併せ、ぜひ有松絞りまつりへお運び下さい。