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2021.11.8

デザイン領域 音をイメージした和紙のオブジェで音楽とコラボレーション

デザイン領域 音をイメージした和紙のオブジェで音楽とコラボレーション  1970年代に建てられた岐阜市・柳ケ瀬の古いビルが、この4月にリノベーションされ「岐阜ビル」としてオープンされています。岐阜ビル1〜2階部分はレンタルスペース、スタジオ、テナント等、人が集まる場として設計されており、その場所で2021年10月31日「弦楽四重奏×暮らしのアート×食×人」を楽しむ「LE PROJET à GIFU」(ル プロジェ ア 岐阜)というイベントが開催されました(主催:ビヤン ビヤン リトゥメ)。このイベントに、本学 メタル&ジュエリーデザインコース 米山和子教授が和紙で作品を作る作家として参加しており、これにあわせデザイン領域1年生17名が「デザイン基礎演習G」にて制作した和紙のオブジェを会場の装飾として展示。音楽とアンティーク陶器、活版印刷カード、和紙グッズ、珈琲、ケーキとコラボレーションしました。  デザイン領域1年生のファンデーションのひとつ「デザイン基礎演習G」は、領域を超えたプロジェクトを学んだり実際に参加したりし、研究を楽しんでいる人に直接触れ自分の方向性や時代性について考える演習。その講義の一環で今回のイベントへの参加となりました。使用した和紙は、イベントにともに参加した美濃和紙のWashi-naryさん(丸重製紙企業組合)から提供いただいたもの。抄きはじめの厚さ等不安定な部分や、ロール状に巻きで保管した際の外側部分等を提供して頂きました。  学生らは、この和紙を使い音をイメージした立体作品を制作しました。和紙の柔らかな色合いに、鋭角的に切り込みの入ったスタイリッシュなもの、ちぎったり皺を入れたりと紙の素材感を生かしたものなど、さまざまな作品が揃いました。  当日の朝、メタル&ジュエリーデザインコース3年生2名、1年生2名が会場を訪れ、天井から100を越えるオブジェを設置しました。設置してみると、空調で作品がゆるやかに揺れ、想像していた以上に有機的に見えます。照明の色合いも大きく影響し、白から電球色にするだけでも大きく印象が変わります。改めて無地白色の和紙の面白さを感じます。  米山先生も、和紙をカーテンのようにした作品を展示。米山先生の作品といえば手漉き和紙を使った印象がありますが、今回はWashi-naryさんの機械抄きの薄い和紙を使ったもの。隣接するビルが迫る大きな窓が、自然光を取り込む柔らかな背景となりました。  カフェのコーヒーの香りとさまざまなオブジェに彩られた心地良い空間での弦楽四重奏のコンサートは大盛況、お客さんを魅了しました。コンサートの中では、オブジェと本学についての紹介もあり、終了後には作品の写真を撮るお客さんの姿も見受けられました。  こうして社会の中で自分の作品が受容されることを見るのは、学生にとって非常に大きな経験になったのではないかと思われます。

2021.11.4

工芸分野領域横断「工芸EXPO」プロジェクト 尾張七宝チーム、鋭意制作中!

工芸分野領域横断「工芸EXPO」プロジェクト 尾張七宝チーム、鋭意制作中!  本学デザイン領域メタル&ジュエリーデザインコース、テキスタイルデザインコース、美術領域工芸コース(陶芸・ガラス)は、今年度から領域横断による連携を始めています。愛知県の伝統工芸とコラボレーションし「第38回伝統的工芸品月間国民会議全国大会」(KOUGEI EXPO IN AICHI)に出展する「工芸EXPOプロジェクト」において、デザイン領域メタル&ジュエリーデザインコース・美術領域ガラスコースでは尾張七宝とコラボレーションし、メタル・ガラス2つの素材を融合させた作品作りに奮闘しています。制作の様子をすこし見せていただきました。  ガラス工房では、学生が溶解炉で溶かしたガラスを竿に巻き取って成形するホットワークにチャレンジしていました。学生に聞くと、伸ばしたガラスをS字に成形し、それをメタルと組み合わせる作品にするとのこと。S字の加工は難易度が高く、技術員の方にうかがっても何度か練習して作るものだとか。方法としては、ガラス全体を温めておいて一気に成形するか、前後に分けてゆっくり慎重に成形するかの2種類。当然、ガラスの扱いに不慣れな学生は後者の方法で制作、しかもこれまでにこうした作業はやったことがないといいます。S字の半分を曲げ、炉の中ではガラスの先の方から温まるため、今度は逆向きにガラスを竿に取り付け、残りの半分を曲げていきます。とはいえ、ガラスを温めるにしても炉の中で溶け落ちないように注意しながら竿を扱い、いざ成形というときにも迷いなく狙う形に持っていかないとすぐに冷めて形が作れなくなってしまいます。温める過程で崩れてきた形を素早く修正しつつ狙う形に曲げていくことは非常に難しく、タイミング、決断、根気とさまざまざことが要求されます。技術員に指導を受けながら、何度も温め形を修正し狙う方向にすこし曲げてと、繰り返していきます。小一時間ほどかかり、逆向きに取り付けてなんとかS字に近づき始めた頃、残念ながら破損。無理に力を加え過ぎたようです。時間切れで、この日のチャレンジはここまでとなりました。  七宝焼の制作は、あま市にある七宝焼アートヴィレッジにて行われています。メタル&ジュエリーデザインコースでは後期の毎週金曜に尾張七宝伝統工芸師の加藤実さんの実技指導を受けていますが、その場で工芸EXPOのための制作も行っています。出展作品は、同じあま市の(資)相互七宝製作所様から、製品にならなかった仕掛品の花瓶を提供していただき、そこにメタルとガラスの作品を組み合わせるというもの。七宝焼自体が金属とガラスを融合させた作品とはいえ、有線七宝のように薄い銀線ではなくもっと大きなガラスを設置するための台座となる金属を溶かして接合するなど、加藤氏がこれまでにやったことのない技法もあり、試行錯誤しながらの制作となります。通常、七宝焼は、釉薬を乗せ800~850度で数分焼くことを絵柄に応じて数回繰り返し完成させますが、750度程度の低めの温度で何度も何度も試しながらの制作となりました。加藤氏いわく、七宝は焼き過ぎなければ修正が効くとのことで、頻繁に窯を覗いて中の様子を窺いながら制作します。七宝の制作は、釉薬を乗せたとき水分が残っていたり、釉薬と素材の間に空気が入っていたりすると大きくはがれてしまったり、でこぼこになってしまったりと、やはり繊細な技術が必要なもの。失敗しては修正して焼き直すといった過程を繰り返し、なんとか作品を仕上げていくことになります。修正が効くとはいえ、何度も焼き冷めるのを待って釉薬を差しという作業は、やはり根気と集中力の要るものです。  ガラスにしても七宝焼にしても、改めて感じるのは制作の難しさ。工芸は、思い通りにならない素材と向き合いながらの制作ということを実感させます。急場しのぎのごまかしや慌てて取り繕うようなことが一切できません。確かな技術はもちろん制作者の精神性といったものまで要求されるような、奥深い世界の一端を感じさせます。  この制作を機に、素材を提供して下さった相互七宝製作所さんの工場を見学させていただく機会に恵まれました。工芸EXPOに参加する学生とともに、七宝焼アートヴィレッジのすぐ近くの相互七宝製作所さんにお邪魔しました。ちょうど無線七宝に釉薬を差す作業中で、息を呑んで作業を見守りました。さまざまな色合いの釉薬や使い込まれた道具たちが並ぶ工房にピンと張りつめた空気が漂い、作品が生まれてくる現場を見ることはとても有意義な経験となりました。長く使われている窯や研磨機にも歴史の重みを感じます。七宝焼の伝統に触れ、大いに触発される素晴らしい工場見学となりました。 ガラス工房 七宝焼アートヴィレッジ 七宝焼制作 相互七宝製作所 見学

2021.10.31

名古屋東急ホテル 「芸大生の〈Show Case〉」 日本画コースが作品展示

名古屋東急ホテル 「芸大生の〈Show Case〉」 日本画コースが作品展示  主催 名古屋東急ホテル、協力 CBCテレビ、CBCラジオ、名古屋芸術大学、愛知県立大学、名古屋造形大学による展示会「芸大生の〈Show Case〉」が2021年9月から開催されています。「芸大生の〈Show Case〉」とは、名古屋東急ホテル2階レストランフロア廊下の6つの展示ブースに芸大生の作品を展示する企画です。本学を含む県内の3つの芸大生の作品が持ち回りで展示されることになります。9月はスタート月ということで各大学から2作品ずつ展示し、本学からはアートクリエイターコース 松岡真矢さんメタル&ジュエリーデザインコース 濵上純華さんの作品が展示されました。10月から3ヶ月間は本学の順番となり、10月は日本画コースの作品を展示することとなりました。大学院2年 三柳有輝さん、4年 市川夢乃さん、佐野七海さん、3年 新井謙成さん、竹内亜美さん、早瀬葵さんの6名の作品が展示されています。  2021年9月30日の夕方搬入を行いました。設備の整ったギャラリーなどはない初めての展示場所に戸惑うこともありました。ガラス張りのショウケースの中に飾られるため反射が気になり、照明が電球色で場所も固定されているため思うように光を当てることができません。額のアクリル板を外したり、作品の位置や角度を微調整するなどして対応しました。制作の難しさとはまた別の展示することの難しさ、作品の意図を明確に伝えることの難しさを実感したのではと思われました。  工夫してなんとか作品を設置し終えると、学生からは「こうした場所で展示することは初めてで、すごくうれしい」「額装して飾ってみると違う作品に見える、自分の作品の新たな面を発見したような気持ちです」など、満ち足りた様子の声が聞かれました。  名古屋東急ホテル マーケティング マネジャーの染谷健二さんは、「これまで企業の宣伝ブースとして使っていた場所ですが、アート作品に変わるとでこれほど華やかになるのかと驚きました。ご協力いただき感謝しています。足を止めて作品をご覧になるお客さまを見かけることもあり、反響が楽しみです」とお話しくださいました。  日本画コースの展示は2021年10月末まで、名古屋東急ホテル2階レストランフロア 「なだ万」-「南国酒家」間通路のショウケースとなります。一般の方もいつでもご覧いただけますでの、ぜひお越しください。

2021.10.27

グループ展「第13回 日本画 sun 展 」が開催

グループ展「第13回 日本画 sun 展 」が開催  本学美術領域日本画コース元教授のが主催する「第13回日本画 sun 展」が2021年10月19日(火)から24日(日)の間ギャラリー名芳洞(中区錦1丁目)で催されました。  一昨年まで毎年4月に開催していた本グループ展ですが、昨年のに新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け10月に延期となったのを契機に、毎年10月開催となったようですが、ちょうど愛知県の緊急事態宣言が解除となり当日のギャラリー名芳洞は「災い転じて福」といった和やかな雰囲気で包まれていました。  出品者は前述の市野先生を始め、日展特選画家を含む13名。今年から制作を一旦お休みして鑑賞側に回る先生がいらっしゃる一方で、本学OBも含めた若い作家さんが新たに加わり、表現の可能性を押し広げる意欲的な作品が本年も数多く出品されました。 市野鷹生先生 12回目 『西陽』と市野先生 「日展出品作品のモチーフを再構成しました」「暑い中、今日も一日よくがんばった」後片付けをする若い職人を夕日がやさしく照らしている。 『鉄線花』(部分) 板画ならではの鮮やかさが目をひいた。 荒木弘訓先生(写真右/本学日本画領域元教授)と談笑する市野先生 荒木先生はでお世話になりました。 本誌21号

2021.10.27

工芸分野領域横断による連携「工芸EXPOプロジェクト」、第三回ミーティング実施

工芸分野領域横断による連携「工芸EXPOプロジェクト」、第三回ミーティング実施  本学美術領域工芸コース(陶芸・ガラス)、デザイン領域メタル&ジュエリーデザインコース、テキスタイルデザインコースは、本年度から工芸分野の領域横断による連携を始めています。領域横断プロジェクトとして、Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場/常滑市)で2021年11月に行われる「第38回伝統的工芸品月間国民会議全国大会」(KOUGEI EXPO IN AICHI)に、愛知県の伝統産業である「三州鬼瓦工芸品」「有松・鳴海絞」「尾張七宝」と本学がコラボレーションし、学生による作品を出展、展示します。これまでのミーティングで作品制作のテーマを「映える」に決めており、今回のミーティングでは、テーマに基づき学生らがどんな作品の制作を考えているかを参加者で共有。同じような作品が重なっていないか、大きさや色など展示するときに問題にならないかなど、作品全体がどんなものに仕上がりそうか現時点での確認を行いました。  プレゼンテーションは、工芸コースの学生から行いました。プレゼンテーションといってもプロジェクトには40名あまりの学生が参加しており、ひとり3分ほどの持ち時間。簡単なラフスケッチをもとに、どんな作品を考えているかを説明しました。工芸コースの学生は三州瓦を使った作品を考えており、瓦の色味を生かした重厚なものが揃いました。ただし、窯の大きさに制限があり、作品サイズは50cm角ほど。それ以上の大きさの作品となると、別々に焼き上げ組み合わせて展示することになります。大きな作品は、制作にも工夫が必要になります。まだアイデアが具体化されていない学生もいましたが、ユニークなモチーフがたくさんあり期待が高まります。  続いてテキスタイルデザインコースの学生が説明。テキスタイルデザインコースは、有松鳴海絞りとのコラボレーションですが、手ぬぐい制作でもお世話になっている(株)張正さんの豆絞りを使っての作品です。張正さんには染めむらのため商品にならなかった豆絞りのB反があり、それを活用して、学生がデザインを加えてシルクスリーンでプリントすることを考えています。テキスタイルコースでは、普段の制作からイメージを明確にしたり人にアイデアを伝えるため関連する写真や素材をコラージュしたムードボードを活用していますが、和柄をテーマにしたムードボードを各自が作成、それをもとにプリントするパターンを発表しました。  最後に、メタル&ジュエリーデザインコースとガラスコースの学生が説明。メタル&ジュエリーコースではアートヴィレッジで見た色のくすみや傷で作品とならなかった仕掛品の活用を考え、それら仕掛品と金属やガラスなど別の素材を組み合わせる作品がいくつか見受けられました。また、時計の文字盤やUSBメモリの筐体に七宝を取り入れるなど、身近な日用品と組み合わせた作品のアイデアもありました。パズルの要素を盛り込むなど工芸品でありながら日用品と組み合わせ、親しみを感じさせるようなアイデアが印象的でした。  工芸コース 中田ナオト准教授からは、「全体が把握できて良かったと思います。まだ制作プランが固まっていない人もいるようですが、プレゼンを見て自分とは違うアプローチもあると考えてみて下さい。これから制作に入っていきますが、実際にやってみないとわからないことも多く変わってくる部分もあるかと思います。計画的に進めて欲しいと思います。展示については、コースごとではなく、全体をミックスするような形で名古屋芸大のスペースが楽しい空間になることを目指しています。展示の方向性みたいなものが見えてきたのではないかと思います。今日のプレゼンから、さらに良い作品が展示に並ぶことを期待します」とコメントしミーティングは終わりとなりました。今後は各自で制作となります。

2021.10.22

東キャンパス「PLAY! PARKがやってきた!」

東キャンパス「PLAY! PARKがやってきた!」  2021年10月8日(金)~10日(日)、東キャンパス TERA およびアート&デザインセンターEASTにて、子どものための屋内広場「PLAY!PARKがやってきた!」を開催しました。このイベントは東京・立川駅北口にオープンした大人も子どもも遊べる美術館と屋内広場のPLAY! MUSEUM、PLAY! PARKから、子ども向けの遊び場「PLAY! PARK」が出張したワークショップ。PLAY! PARKの協力のもと、アート&デザインセンターの主催で行われました。これまでPLAY! PARKで開催された遊びの中から、風船をラップでくるみ割れないようにした「バルーン・モンスター」、新聞紙をくしゃくしゃにして麻縄でつるした「くしゃくしゃおばけ」、障子紙を貼り合わせて作った巨大なたまご「ぐりとぐらの紙のたまご」、PLAY! PARKで子どもたちが作った色とりどりのPLAY! PAPERを使ってコラージュ作品を作る「Let's PLAY! PAPER」の4種類。前日からPLAY! PARKキュレーターの小栗里奈さんと、学生らが制作しました。期間中、近隣からたくさんの親子が東キャンパスを訪れました。  当日は、人間発達学部の学生らが中心のボランティアが子どもたちの対応にあたり、一緒に遊びました。いずれの遊具も身近で安価な素材が組み合わされて作られており、その工夫は素晴らしいものでした。少々壊れても何の問題もなく遊ぶことができ、子どもたちも思い切り自由に身体を使って遊びました。子どもたちが遊びやすいように構造がしっかりと考えられており、素材を用意すれば簡単に自分でも制作できる点なども非常に優れていると感じました。くしゃくしゃおばけにぶら下がったり、バルーン・モンスターによじ登ったり、元気いっぱいに遊ぶ様子がキャンパスの至るところで見受けられました。はしゃぎすぎて怪我をしないようボランティアの学生らが子どもの様子を見ながら相手をし、安全に遊ぶことができたことも良いことでした。  身体を使っての遊びと同時に、Let's PLAY! PAPERでコラージュ作りを楽しむ子どもたちの姿も印象的でした。あらかじめ用意されている色とりどりの紙にさらにクレヨンなどで絵や色を加え、はさみで切ったり糊付けしたりと自由に新たな作品を創作しました。じっくりと創作を楽しんでいる様子が窺えました。  身体を使うこと、じっくりと創作に取り組むこと、この2つを遊びを通して体験することができた意義深いイベントとなりました。

2021.10.21

工芸分野領域横断「工芸EXPO」プロジェクト 三州にて作品の窯詰め

工芸分野領域横断「工芸EXPO」プロジェクト 三州にて作品の窯詰め  本学美術領域工芸コース(陶芸・ガラス)、デザイン領域メタル&ジュエリーデザインコース、テキスタイルデザインコースは、本年度から領域横断による連携を始めています。愛知県の伝統工芸とコラボレーションし「第38回伝統的工芸品月間国民会議全国大会」(KOUGEI EXPO IN AICHI)に出展する「工芸EXPOプロジェクト」において、工芸コースは瓦の産地である三州とコラボレーションし、鬼瓦の技法を使った作品作りを進めています。2021年10月14日、三河粘土で作った作品を窯元にて窯詰めしました。  学生が学内で制作してきた作品は、一旦、高浜市の株式会社 丸市様に運び込まれ、十分に乾燥させます。粘土を時間をかけてじっくり乾燥させなければ作品にヒビが入ってしまうことがあり、鬼瓦の制作では窯の余熱を使ったり専用の乾燥機を使うなどして乾燥の仕上げを行います。丸市さんでは乾燥機を使い、作品を乾燥していただきました。次に、作品を窯焚きしていただく山本鬼瓦工業株式会社様に運びます。作品は乾燥した状態がもっとももろく、壊さないように運搬します。この日の朝、丸市さんによって、慎重に運び込まれました。作品の状態を確認して、いよいよ窯詰めです。乾燥させた作品をひとつひとつ丁寧に窯へ入れていきます。窯詰めにもさまざまなノウハウがあり、焼くことで作品が縮み窯の中でずれることでヒビになったりカケになったりするそうで、作品の形状を見極め、置き方を工夫したりクッションになるダンボール紙を敷いたりして詰めていきます。作品同士がくっついてしまわないよう、かつ、できるだけ効率よく多くの作品が入れられるよう、さまざまなサイズの煉瓦を組み合わせて棚を作り入れていきます。ぎっしりと作品を詰めたら、窯を閉じて火入れです。  三州瓦のいぶしは、釉薬によるものではなく炭素の皮膜を付着させる技法で、1100度程度に焼き締めたあと、窯を密閉した状態でブタンガスを注入し作品の表面に炭素皮膜を作ります。ガスを扱うため気密が保たれるよう、確認しながら窯の蓋をしっかりと閉めました。窯には、左右6か所ずつ火入れ口が開いており、まずは左右の2か所に点火しました。この状態で1日かけ徐々に温度を上げ、24時間後から3時間おきに2か所ずつ火を増やし温度を上げ、1100度に達したら火を止め、冷ましながらブタンガスを注入し、1日かけて冷却します。冷却の過程で炭素が反応し、いぶし独特の風合いが生まれます。本日窯詰めした作品は、18日に窯出しとなります。  ヒビや割れが発生しないか、いぶしの色合いがどんなふうに作品を変えてくれるか、不安と期待の中、窯出しを待つことになります。  窯詰めの後、山本鬼瓦工業さんの工房を見学させていただき、鬼師(鬼瓦のような立体的な瓦を手作業で作る職人)の作業現場を見せていただきました。山本鬼瓦工業さんでは、文化財になっているような多くの神社仏閣の鬼瓦を手がけていますが、それまで使われていた瓦をそっくり再現することが行われているとのこと。ヘラを使った成形で、迫力のある表情に加え粘土の状態でありながらも細部まで艶やかで美しく、技術的にもたいへん興味深いものでした。普段ではなかなか見ることのできないプロの現場を見ることは、学生にとっても大いに刺激になるのではと思われました。  作品がどんなふうに仕上がるか、いよいよ最終工程を迎えます。

2021.10.19

【工芸から】グリーンシティプロジェクト 室内展示を実施

【工芸から】グリーンシティプロジェクト 室内展示を実施  今年度、美術領域 アートクリエイターコース(陶芸・ガラス、コミュニケーションアート)、デザイン領域 テキスタイルデザインコース、メタル&ジュエリーデザインコースでは、工芸分野、美術とデザインの領域横断連携を押し進めています。「工芸から グリーンシティプロジェクト」も連携の一環で、大学来訪者や教職員のための宿泊施設“グリーンシティ”の住環境の改善をテーマに、作品を制作しています。昨年度は、作品をアート&デザインセンターにて展示を行いましたが、今年度はグリーンシティ 現地に展示することとなりました。2021年10月5日、6日、7日の3日間でしたが、貴重な展示となりました。  グリーンシティは1974年に建てられたマンション。本学の宿舎として使われているのはB棟2階の206号室、4LDKの間取りです。その部屋のあらゆる場所、お風呂やトイレにまで作品が飾られています。今年度のテーマとなっているのが「安心感」で、プロジェクトに参加する学生らが話し合って決められ、ゆったりとくつろぐことのできる空間になるよう作品が制作されています。本来、装飾の少ない簡素な作りですが、部屋のあちこちに作品が置かれ、コンセプト通りほっとできる空間になっています。思わぬところに小さな作品もあり、遊び心を感じさせます。また、作品は工芸分野3コースの学生によるものが中心ですが、近隣のイラストマップなどヴィジュアルデザインコースやライフスタイルデザインコースの学生の作品もあり、今後の広がりを期待させるものとなりました。  アートクリエイターコース 中田ナオト准教授は「実際の住空間の中に作品を置くことは、アート&デザインセンターなどギャラリースペースでの展示とは異なり、展示方法の工夫が必要であり、また作品そのものがどうあるべきかを考えることにもつながった。学生だけでなく教員にとっても貴重な経験になりました」と感想を述べました。  見学に訪れたデザイン領域 ライフスタイルデザインコース 萩原周 教授も「芸術大学が用意する宿舎として、来訪者をもてなす場所にふさわしくなった」と展示を楽しんでいる様子でした。  展示は2021年10月7日までとなりますが一部の作品はこのまま部屋で使われ、来訪者を楽しませることになります。

2021.10.14

工芸分野領域横断「工芸EXPOプロジェクト」 有松・鳴海絞り 張正 豆絞り制作を見学

工芸分野領域横断「工芸EXPOプロジェクト」有松・鳴海絞り 張正 豆絞り制作を見学  今年度から、テキスタイルデザインコース、メタル&ジュエリーデザインコース、工芸コース(陶芸・ガラス)は、領域を越えた連携を進めています。愛知県の伝統工芸とコラボレーションし「第38回伝統的工芸品月間国民会議全国大会」(KOUGEI EXPO IN AICHI)に出展する「工芸EXPOプロジェクト」では、テキスタイルデザインコースの学生が、例年手ぬぐい制作でお世話になっている有松・鳴海絞りの張正さんとコラボレーションし、伝統の「豆絞り」を使った作品を制作します。  豆絞りは、江戸時代から続くドット模様の伝統的な絵柄ですが、戦争により制作方法が失われ、張正さんの先代、先々代が研究を重ね復活させたもの。今回、学生らは、生産の過程で出たB反(染めむらなどちょっとした難点のある二級品)を活用し、豆絞りの柄と重ねるように染めを加えて作品を作ります。これを機に、張正さんのご厚意で豆絞りの制作を見学させていただきました。  張正さんは、豆絞りを板締め(布を2枚の板の間に挟み強く締め、染料の浸透を防いで模様を染め出す染色法)、浸染(布を染料溶液に浸して染める方法)で制作しており、その技術は、長年の研究と経験で得られたもの。門外不出の技術で、なかなか見せてもらえるものではありません。見学会は、とても貴重なものとなりました。  工場に集まった学生らは、密にならないように、また作業の邪魔にならないように気を付けながら作業を見守りました。事前に屛風畳みに折られた布を、豆絞り用に溝を掘った専用の板に締めていきます。豆絞りの丸い模様は、染料がにじむことで丸くなるため、締めすぎると綺麗な丸になりません。もちろん締め方が緩いと模様がつながってしまい、やはり丸にならず、微妙な力加減が必要です。染料の温度や、その日の湿度も染みこみ具合に影響するため、しっかりと温度や浸す時間の管理が必要です。張りつめた雰囲気の中、締め上げた布をゆっくりと浸し、何度も時計を確認しながら布を返し、染めていきました。張正さんでは、通常ならば色味に深みを出すため染めた生地を1日置いてから洗うそうですが、今回は特別に一部を洗って見せていただきました。板から外した生地はストライプになっていますが、水の中で広げると鮮やかな豆絞りの模様が現れ、感嘆の声が漏れました。  張正さんは「こうした技術をぜひ若い人に受け継いで欲しい」と話し、学生らは作品作りへ向け薫陶を受けたようでした。  「第38回伝統的工芸品月間国民会議全国大会」(KOUGEI EXPO IN AICHI)は、2021年11月27日(土)~29日(月)、Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場・愛知県常滑市セントレア)にて開催されます。テキスタイルデザインコースの作品を含め、本学のブースでは愛知県の伝統工芸のコラボレーション作品が多数展示されます。お楽しみに。

2021.10.4

鯱バス×先端メディア表現コース デジタルツーリズム「withコロナ時代の新”旅体験”モデル 共同研究」始動

鯱バス×先端メディア表現コース デジタルツーリズム「withコロナ時代の新"旅体験"モデル 共同研究」始動  貸切バス、バスツアーなどでおなじみの鯱バス株式会社様と、デザイン領域 先端メディア表現コースでは、コロナ禍で落ち込む観光業の回復と新しい観光のあり方を共同研究、開発するプロジェクトを開始しています。地域の観光資源を活用し、従来型の観光を単に置き換えるだけではない「デジタルツーリズム」を目指し、東海地区の特性を生かした産業観光としての魅力、またそこで働く人にもスポットを当て、新たな体験価値を提供できるデジタルツーリズムの創出にチャレンジします。  キックオフとしてこのプロジェクトに参画する、株式会社えびせんべいの里様、株式会社まるや八丁味噌様、大野精工株式会社様の3社を、学生らが見学しました。見学には、鯱バス様のご協力でバスを用意していただき、1日かけての見学となりました。鯱バス 経営戦略部の方々に加え、宇津木滋 代表取締役社長にも同行していただき、学生たちにとって見学会そのものが貴重な経験となりました。  午前中は、えびせんべいの里 美浜本店へ。50種類近くのえびせんべいがズラリと並ぶ販売コーナーから入り、工場見学、えびせんべいの製造などを紹介した映像を見て、休憩コーナーでディスカッションを行いました。食品を扱うだけに通常の工場見学ではガラス越しの見学となりますが、えびせんべいの魅力を伝えるためには焼き上げたり油で揚げるときの音がポイントになるとの意見。シズル感のある音と映像のためには撮影場所の工夫が必要で、ご協力をお願いすることとなりました。また、えびせんべいが地元の食文化に根付いていることもわかり、歴史的な側面からも興味深い食べものであることがわかりました。  次は岡崎のまるや八丁味噌へ赴きました。まるや八丁味噌では、普段から観光客向けに蔵見学のコースが設定されており、そのコースに従って見学しました。蔵に入ると、濃厚な味噌の香りが漂います。米味噌とは異なる八丁味噌の製法について説明していただき、巨大な木樽とピラミッドのように積まれた石積みを見学。石の積み方に職人のこだわりと技があり、いままで地震で崩れたことがないなど、さまざまなお話を聞かせていただきました。八丁味噌は室町時代からの歴史が有り、蔵の中にも豊臣秀吉の逸話が残る井戸や江戸時代に作られ今もそのまま使われている蔵など、いくつも見どころがありました。映像撮影のポイントとなりそうな石積みについても、タイミングを合わせて作業日に撮影に入れることや、樽の上に登って撮影することなどの確認と許可をいただきました。  最後は、西尾市の大野精工様 King Farmにお伺いしました。大野精工は金属加工の会社ですが、2016年に新事業として農業分野に参入。農園King Farmを開業し、いちご狩りやカフェを運営しています。King Farmでは、いちごのハウス、プチトマトのハウス、カフェを見学させていただきました。ハウスには近代的な設備が導入され、製造業の考え方を取り入れたまさにハイテク農業といったものです。しかしながら強く印象に残ったのは、ハウスを管理している人のいちごやトマトに対する愛情です。設備についての説明の言葉の端々からも、いちごやトマトが大好きであることが伝わってきます。そうした思いをどうすれば伝えられるかが課題となりそうです。  それぞれの場所でしっかりと説明を受け、その魅力を存分に感じることができたとても有意義な見学会となりました。しかし、それ以上にまだまだ魅力的な部分がいずれの場所にもたくさん隠されていそうな感触もあります。プロジェクトは、先端メディア表現コースで来年3月までに制作を行い、4月以降鯱バスでテストマーケティング(試⾏販売)を行う予定となっています。デジタルツーリズムという新しい分野に取り組んでいる鯱バス 経営戦略部の考え方も興味深く、このプロジェクトどういった形で結実するのか非常に楽しみです。 えびせんべいの里 美浜本店 まるや八丁味噌 King Farm