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2024.11.25

アートフェア「artists N,G,Y 2024 ~アート、今、未来~」を開催

アートフェア「artists N,G,Y 2024 ~アート、今、未来~」を開催  2024年11月20日(水)~26日(火)、松坂屋名古屋店南館8階 マツザカヤホール(美術画廊)にて、美術領域の学生、大学院生による展覧会「artists N,G,Y 2024 ~アート、今、未来~」を開催しました。  「artists N,G,Y 2024 〜アート、今、未来〜」は、「Next Global Youngsters(これからを生きる若者たち)」を基本理念に掲げ、芸大生を始めとする若手アーティストの社会進出によりアート市場の拡大及び名古屋(Na Go Ya)の活性化を志したプロジェクト。松坂屋名古屋店のご協力で、昨年から始まったものです。作品を鑑賞するだけにとどまらず、購入することも可能となっています。  昨年は日本画コースのみの出展でしたが、今年は、日本画、洋画、現代アート、コミュニケーションアート、工芸、美術総合と、美術領域すべてのコースからの出展となり平面作品だけでなく立体作品も展示されています。  初日の11月20日には、オープニングイベントとしてギャラリートークが行われました。  始めに、日本画コース 長谷川喜久主任教授から「このartists N,G,Y は、若い作家、学生が、ここをスタート地点として羽ばたいていけるような、そういう機会になればと思っています。同時に、学生がアートフェアに参加し作品を販売することができる、お客さまのお手元に作品を届けることができる、そういう形で支援をしていただける場にもなっています。今回は美術領域にある6つのコースから、さまざまな作品を展示させていただいております。気に入った作品も見つけていただければと思っております」と挨拶しました。  ギャラリートークには、大学院日本画1年 伊藤歩生さん(→作品)、田口果歩さん(→作品)、洋画コース4年 大澤綺さん(→作品)、2年 澤田萌菜子さん(→作品)、現代アートコース3年 嶋野文台さん(→作品)、花井和瑚さん(→作品)、大学院工芸2年 池田考作さん(→作品1/→作品2)、周維清さん(→作品)の8名が参加、それぞれの作品について来場者に説明しました。  訪れたお客さんからは「日本画だと思って観に来ましたが、立体作品もあり、びっくりしました。若々しいしバラエティがあって、作品を観て元気になりました」との声も聞かれました。購入しやすい価格に設定されていることもあり、オープン早々に売れてしまう作品もあり、盛況な展覧会になりました。

2024.11.21

カーデザインコース、特別客員教授 永島讓二氏の講座を開催

カーデザインコース、特別客員教授 永島讓二氏の講座を開催  カーデザインコースでは、2024年11月6日(水)、7日(木)の2日間にわたり、特別客員教授の永島讓二さんをお招きし、特別講座を開催しました。  永島讓二さんは、ドイツ・ミュンヘン在住、オペルAG、ルノー公団、BMWと欧州カーデザイン界の第一線で長く活躍するカーデザイナー。ルノー・サフラン(1992-1998年)、BMW Z3(E36/7)、3シリーズ(E90)、5シリーズ(E39)などを担当、また、カーグラフィック誌にてコラムを連載するなど多岐にわたる活躍をされています。  加えて、今回の講義では、一昨年までカーデザインコースで教鞭を執った高次信也先生、また、ゲストとしてカースタイリング誌 編集長の難波治さん(元(株)SUBARUデザイン部長、東京都立大 教授)も加わり、学生作品の講評会と演習を行いました。  1日目、11月6日は、学生が制作したカーデザインの講評会が行われました。テーマはあらかじめ与えられていた課題、過去の名車を、現代または未来にあわせてモディファイしてデザインするというもの。どのクルマを選ぶかも課題の一部となっており、車種の選択もそれぞれにゆだねられています。2年生から4年生まで17名の学生がデザインを一枚のボードにまとめ、場合によってはクレイモデルも制作してプレゼンテーションを行いました。なぜこのクルマを選んだか、どの部分がアイデンティティになっているか、そして、それをどう処理したか、じっくりと説明します。  永島さんの講評では、そのクルマが作られた時代や背景、そのデザイナーがほかにどんなクルマをデザインしたかなどもコメントされ、デザインにとどまらず文化や歴史にまで話題は及びます。もちろん、デザイン画の見せ方や描く技術にも言及されました。思考のプロセスを見せることが重要とする言葉が印象的で、ラフに描いた絵でも段階的に見せるものを高く評価していました。  また、一見、上手く描けている絵でも、形が曖昧になっている部分を指摘、形のイメージがしっかりできていないと見抜かれます。あらためて、デザイン画は、絵として上手い下手よりもアイデアを明確に伝えるためのものであることが納得できます。  講評会は、たっぷりと時間を取って延長して行われ、クルマと絵と文化を味わうような、贅沢な時間を過ごしたような有意義なものとなりました。  2日目は、講義と演習です。まずは高次先生からバイクのデザインについての講義が行われました。オートバイがいかに進化してきたかを、レオナルド・ダ・ヴィンチの自転車の概念から始め、モーターの導入、世界初の量産モーターサイクルの誕生、第二次世界大戦後アメリカのカウンターカルチャーとの関わりなど、順を追って説明されました  日本のバイクメーカーの成功についても触れられ、ホンダのスーパーカブがアメリカ市場でヒットし、日本メーカーが世界シェアを拡大していった歴史を振り返ります。バイクの構成要素やレイアウトの違いに触れ、クルマのパッケージングとは異なるレイアウトの概念が強調されました。バイクはすべての部品が外から見えるため、構造の美しさと機能性のバランスが重要であると説明されました。  現代では、エコロジーや快適性に加え、ライディング体験を重視するようになってきているとといわれ、ライダーと一体になって操作することで楽しさが生まれ人と機械がシンクロする感覚が重要だと強調されます。  近年のデジタル技術の進化によりデザインのプロセスは効率化されていますが、実物モデルで確認することの重要性を説き、デジタルのメリットと手作業の精密さを上手く組み合わせることでより高度なデザインが成り立つことから、手作業の重要さをあらためて強調しました。  続いて、永島さんの講義では、課題からの流れでカーデザインにおけるレトロデザイン、古いクルマから伝わるデザインの再解釈について説明、現代のデザインにどのように受け継がれているかを解説されました。  クラシックな要素を持つルノー アルピーヌ A110、Mini、ダッジ チャレンジャーといったモデルを過去の名車を元にした新しいデザインの事例として挙げられ、現代の技術やスタイルに合う形で再解釈されていること指摘しつつ、上手くいっているかそうでないかを皆で考えました。  単に過去の形状やデザインをそのままコピーするのではなく、現代的なエッセンスを融合しながらもオリジナルの特徴やシンボリックな要素が生かさすことで新しいデザインを作り出すことが肝要と説明されました。  講義の後半では、就職活動に向けたポートフォリオの作成に関するアドバイスも行われました。メーカーへの応募で特に評価されるポイントとして、昨日の講評会でも指摘のあった、アイデアのプロセスを示すことが重要だと挙げられました。また、デジタルとアナログの両方を組み合わせた構成が望ましいとし、デジタルで作成した3Dモデルだけでなく、手描きのスケッチやマテリアルのサンプルなども併せて提出することが効果的であると説明されました。  講義の終了後は、学生が質問したり、ポートフォリオを見ていただきアドバイスをもらいました。また、ポートフォリオだけでなくクレイ工房で制作中のモデルを見ていただきアドバイスもいただきました。  学生にとっては、世界で活躍されたデザイナーに作品を観てもらう貴重な機会となり、有意義な特別講座となりました。

2024.10.31

名古屋芸術大学 ALPs × SLOW ART LAB「Edible Classroom 食の小さな循環 ~それぞれの農と小さな道具たち~」 開催

名古屋芸術大学 ALPs × SLOW ART LAB「Edible Classroom 食の小さな循環 ~それぞれの農と小さな道具たち~」 開催  デザイン領域では、2024年3月に名古屋市栄にオープンしたアートセンター「SLOW ART CENTER NEGOYA」と連携し、2024年10月20日(日)~27日(日)「Edible Classroom 食の小さな循環 ~それぞれの農と小さな道具たち~」と題し、名古屋近隣の農業にかかわる6組を取材、それぞれの農のありかたや食べる(料理する)人とのかかわりを調査、インタビューを冊子にまとめ、農をめぐる関係性を図示し使われている道具などを展示しました。  展示にあわせ2024年10月26日(土)には、食育活動を推進するエディブルメディア代表の冨田栄里さんをお招きし、エディブルメディアの取り組みや「持続可能な生き方のための菜園教育—エディブル・エデュケーション」の創造と発展をミッションとするエディブル・スクールヤード・ジャパンの活動についてお話しいただきました。  Edible Classroomでは取材・調査のほか、6月からSLOW ART CENTER NEGOYAの屋上で野菜作りも行っており、それらの報告も行われました。  担当するデザイン領域 小粥千寿准教授は、学生が食の生産者へのインタビューを通じて食の循環やデザインの役割について考えるプロジェクトと説明し、フィールドワークで実際に現場に出て人々と触れ合い生の声を聞く経験をすること、食への理解として小規模な生産者との交流を通じて生産から消費までの過程を深く理解し食の循環の大切さを学ぶこと、さらにデザインの役割として食に関する問題を解決したり新たな価値を生み出したりできることを実感することの3点を目標にしたといいます。最終的な展示の型式や道具に着目することなどはインタビューを重ねる中で次第に見えてきたもので、リサーチをしながらアウトプットを少しずつイメージしていく過程を実体験を通して学べたのでは、とプロジェクトをまとめました。  プロジェクトに参加、取材とリサーチを行った、ライフデザインコース3年 鴨下ゆうさん、長岡知里さん、メディアコミュニケーションデザインコース 3年 伊藤怜奈さんに取り組みと感想を伺いました。  「初めに取材が中心となると聞き、取材やリサーチみたいなことがやってみたかったので、軽い気持ちで参加しました。私は、普段スマホやモニターを見てばかりの生活をしていますが、家の周りや身近な場所で畑をやっている人がいます。これまでそれほどかかわりを持っていませんでしたが、とても興味がわきました。自分のことは自分でやるみたい考えがありますが、突き詰めると自分の食べるものも自分で作る、自分の生活を考えることに食べることも大きくかかわっているんだなとあらためて思いました。土に触ることはこれまでありませんでしたが、そうしたこともいいなと思うようになりました」(鴨下ゆうさん)。  「メディアコミュニケーションコースではなかなか取材するような機会は少ないと思い、私もフィールドリサーチをやりたいと参加しました。リサーチを始め、最初の頃は最終的にどんなアウトプットをすればいいか何も想像できないままでした。インタビューされる人も何が聞きたいんだろうというのもありますし、自分たちも何を聞き出せばいいのか手探りで、いろいろ考えながら進めて来ました。皆さん本当にいっぱいお話してくださって、まとめるときに広がりすぎたかなという反省があり、どの部分をクローズアップするかで苦労しました。プロジェクトを通して、野菜自体はすごく身近にあったんですけどその先の野菜育ててる人の考えに触れていなかったことに気が付きました。野菜や野菜作りを身近に感じるようになりました」(伊藤怜奈さん)。  「私は1年生の頃からフードドライブのボランティアに参加していて、 食に関するデザインとそのリサーチだと聞き、興味もあるしやってみたいと参加しました。取材することは初めてでしたが、取材に協力的な方がすごく多くて本当に助かりました。道具の展示を考えたのは、江南市のharutona farmに伺ったとき、林さんがキュウホーという除草器具がすごく良くてもっと広めたい、とおっしゃっていたのがきっかけです。小学生の頃は、芋掘り体験や野菜を育てたりすることを楽しく感じていたのに、中学、高校と上がっていくと農業イコール汚れることや虫がイヤみたいなことになっていくのはなぜだろうと考えました。農業にかかわる人に会い、実際にやってみると楽しいんですよ。一度離れて、大人になったら一周まわって楽しくなった、そうした道のりも楽しかったなと思います。たぶん、農業大学や農学部みたいに農に近い立場じゃないから気が付けたのではと思います。自分のステップアップにもなったように思います」(長岡知里さん)。  屋上菜園の野菜作りを行ったライフスタイルデザインコース 2年生の窪田晴さん、吉田優之介さんは、「うまく育っていくことのことに対して幸せを感じました。なんか嬉しいんですよね、ちゃんと育ってくれるのが。今、パプリカとかいっぱいなってますよ」(吉田優之介さん)、「野菜を作ったことなかったので、新鮮な感じです。普段スーパーで買ってたものがこうやって育つ、実際に食べることができることも面白いなって感じました」(窪田晴さん)と充実した表情。  トークイベントでは、エディブルメディア代表の冨田栄里さんに小粥千寿准教授がお話を伺う型式で行われました。  エディブル・スクールヤード・ジャパンの活動として米国カリフォルニア州バークレーにある「エディブルスクールヤード」の取り組みを基にして日本の学校で菜園作りや有機栽培の給食導入を支援していることを説明していただきました。また冨田さんは、ある参加者がバークレーで食育関連の活動に興味を持ち、映画『エディブル・シティ』を日本に紹介・翻訳する活動をしたいということで協力して始めたことなど、映画配給の経緯についてお話しいただきました。日本での上映は特にコロナ禍で再注目され、食の重要性や市民主体の持続可能な生活への関心を高める役割を果たしているといいます。映画やワークショップを通じ、地域のコミュニティガーデンでの野菜栽培や収穫を体験しながら、食の循環を学ぶ機会を提供し、学生への映画上映などで食育が次世代の教育にどう役立つかなどお話しいただきました。  最後に、デザインの力を活用し食や環境に関する意識を向上させることにも言及され、どんなメッセージを伝えたいかデザインというスキルで何を発信できるか、社会にかかわることを大事に考えて欲しいとまとめました。

2024.8.29

テキスタイルデザインコース、古川美術館・爲三郎記念館にて友禅染のためのスケッチ会を開催

テキスタイルデザインコース、古川美術館・爲三郎記念館にて友禅染のためのスケッチ会を開催  テキスタイルデザインコースでは3年生後期の授業で、古川美術館 分館爲三郎記念館をモチーフとした友禅染の作品を制作します。その準備として、2024年8月23日(金)学生らは爲三郎記念館を訪れ、取材のためのスケッチを行いました。  本学デザイン領域テキスタイルデザインコース、メタル&ジュエリーデザインコース、 美術領域 工芸コース(陶芸・ガラス)と古川美術館は2022年度から本格的にコラボレーションを始め、爲三郎記念館での作品展示「メイゲイのコウゲイ」を開催してきました。これまでは、展覧会に参加する学生が各自、爲三郎記念館を訪れ数寄屋造りの魅力を考え作品制作を行うということを行っていましたが、今年度テキスタイルデザインコースでは、スケッチという形で取材し、それを基にデザインを考え友禅染の制作を行うカリキュラムとなります。  講義を受ける3年生は、今回初めて爲三郎記念館を訪れた学生がほとんどで、スケッチ会に先立ち、館長代理兼事務局長 伊藤洋介さんから爲三郎記念館についての説明を受けました。もともとは実業家である古川爲三郎氏の私邸であったことに始まり、茶事を目的に建てられた数寄屋建築、日本庭園、茶室「知足庵」について、庭を散策しながら紹介していただく贅沢な説明会となりました。  続いて室内に入り、茶道の背景と作法について簡単にお話しいただき、学生らはお抹茶をいただきました。初めてお抹茶を口にする学生もいましたが、数寄屋造りと相まって和の情緒を堪能しました。  昼食をはさみ、午後からはいよいよスケッチの始まり。学生たちは、魅力を感じる場所を探しスケッチブックを開きます。えんぴつを走らせるもの、スマートフォンで細部を写真に撮って観察するもの、思い思いにスケッチブックを埋めて行きました。2時間ほど経ったところで古川美術館の会議室に移り、スケッチに彩色し絵を仕上げました。  まだできあがる前でしたがタイムリミットとなり、手を止めて講評となりました。授業を担当する樫尾聡美 非常勤講師と古川美術館学芸員 早川祥子さんに作品を観ていただきました。ひとりひとり簡単に爲三郎記念館のどの部分に魅力を感じ、どんな絵を描いたかスケッチブックを開きながら説明しました。天井板や欄間など建物の細部に魅力を見いだした学生、置物や野点傘の曲線や形に魅力を感じた学生、数寄屋造りの空間そのものを描いた学生など、それぞれにユニークな視点が印象的です。樫尾講師からは、「きちんと取材ができています。色使いも含めてデザインに落とし込むとおもしろそう」などと、学生それぞれの着眼点を評価、今後の制作を見据えたコメントが聞かれました。早川さんからは、「学芸員でも気が付いていなかった魅力を発見したもらったように思います」といった言葉も飛び出し、非常に充実したスケッチ会となりました。  学生はそれぞれ多くの写真も撮影しており、まだ描ききれていない爲三郎記念館の魅力もたくさんありそうに思われます。どんな作品ができあがるのか、期待が高まります。

2024.7.30

テキスタイルデザインコース、メタル&ジュエリーデザインコース 客員教授対談「愛知県の伝統産業をヨーロッパ市場へ、世界で通用するブランドデザイン」

テキスタイルデザインコース、メタル&ジュエリーコース 客員教授対談「愛知県の伝統産業をヨーロッパ市場へ、世界で通用するブランドデザイン」  デザイン領域テキスタイルデザインコース、メタル&ジュエリーコース(2024年度1年次入学生から工芸コースへ移行)では工芸分野の領域横断による連携を行っています。  今年度は、これまで長くテキスタイルデザインコースでお世話になっている株式会社スズサン CEO クリエイティブディレクター 村瀬弘行氏、メタル&ジュエリーコースに、GRAFFシニアデザイナー、元ロレンツ・バウマー、ルイ・ヴィトン、ヴァンクリーフ&アーペルなどのジュエリーデザイナーである名和光道氏を客員教授にお迎えし、2024年7月2日(火)に特別講義を行いました。  お二人とも、名古屋市が主導する地域に根ざしている伝統産業をその技術とアイデンティティを活かしながら世界に発信していく伝統産業海外マーケティング支援プロジェクト「Creation as DIALOGUE」にて、クリエイティブディレクター/トータルコーディネーター(村瀬さん)、デザインアドバイザー/コミュニケーションコーディネーター(名和さん)と重要な役割を果たしています。今回の対談では、Creation as DIALOGUEを始めるまでの経緯と、ヨーロッパから見た有松絞りや尾張七宝といった伝統産業の価値についてお話しいただきました。お二人ともヨーロッパ在住であり、ドイツ デュッセルドルフ(村瀬さん)、フランス パリ(名和さん)をオンラインでつないでの対談となりました。  講義は、扇千花教授、米山和子教授により、テキスタイルデザインコース、メタル&ジュエリーデザインコースが、それぞれ有松絞りと尾張七宝にどのようにかかわってきたか、経緯の紹介から始まりました。  テキスタイルデザインコースが有松絞りと連携を始めるのが2005年。その頃には扇教授は村瀬さんとも出会っていたといいます。2009年に本格的に板締め絞りの授業を始め、有松とのかかわりが蜜になっていきます。村瀬さんには「後継者問題の改善と産地の活性化」というテーマがあり、産学連携がさらに深いものになっていき現在の「有松絞り 手ぬぐいブランドプロジェクト」へと発展していきます。連携に参加した学生が有松にて起業をしたり、卒業生がSuzusanへ就職するなど、人材の輩出も大きな功績といえます。  メタル&ジュエリーデザインコースは2019年から尾張七宝と連携を始め、あま市七宝焼アートヴィレッジでも授業や安藤七宝店のショップ・工場見学などが始まります。2021年に名古屋市は Creation as DIALOGUEを開始、名和さんは安藤七宝店とコラボレーションし「J.ANDO」を立ち上げます。2023年には学生作品を安藤七宝店栄店に展示し、安藤七宝店とCreation as DIALOGUEを軸に、名和さんとメタル&ジュエリーデザインコースとのかかわりが始まり現在に至るとのことです。  対談の前に、村瀬さん、名和さんから、自己紹介とこれまでやってきた仕事について紹介がありました。  村瀬さんは、2003年に大学で学ぶため渡欧、Die Kunstakademie Düsseldorf(デュッセルドルフ/ドイツ)で立体芸術と建築を専攻、テキスタイルやアパレル、有松絞りとは関係のない領域を専門としていました。当時のルームメイトが、たまたま部屋に置いてあった有松鳴海絞りの布地に興味を示し、あらためて魅力に気が付いたといいます。すでにその頃には、職人さんの数も減りどうすれば次の世代に伝統的な技術をつないでいけるか問題を認識し、Suzusanの立ち上げにつながります。村瀬さんは、「Material」(素材)、「Technique」(技術、有松絞り)、「Way of use」(用途)の3つを考え、綿以外の素材を染色することで絞りを洋服へ転用、また、ランプシェードやインテリアへと用途を見直すことで、絞りの可能性を範囲を広げています。こうしたことで生活の中に絞りを取り入れられるようにし、次世代へとつなげられるようにしたいと説明しました。  名和さんは、工芸高校でデザインを学び、デザイナーとしてグラフィックやファッション、建築などに携わりたいと考えていたといいます。インテリアデザインの会社で働き始めるも、自分のキャリアや先の展望が見えないことに不安を持ち退職。家具やインテリアに関連するということでパリへ渡航、自分が本当にやりたいことを考えたといいます。そんなとき、ロンドンで行われたティファニーの展覧会を見て衝撃を受け、ジュエリーデザイナーを目指します。カルティエとヴァンクリーフ&アーペルの写真集を買い、アルバイトをしながら写真集のジュエリーの模写などから独学でデザイン画を描き、1年ほどかけてポートフォリオを作成。アポイント無しでロレンツ・バウマーに持って行った所、翌日から研修生として入れてもらえたといいます。「パリに行って、そこでいろんなことをやって生きている人がいて、こんなに人生は自由でいいんだ、夢を追っていていいんだ、と変わりました」という言葉が印象的です。「10年後の自分はどうなっているかわからない、試行錯誤しながら悩んで頑張っていくうちに道が開ける」と学生らに応援しつつ、自身を振り返りました。  後半はいよいよ対談、ヨーロッパでお二人が出会うところから始まります。「1点もののハイジュエリーをデザインする世界に、日本人がいるということに驚いた」(村瀬)、「1枚写真見たときからすごいなと。そのとき展覧会の準備していて、たぶん、次の日には連絡したと思います」(名和)と、お互い認め合う存在。名和さんから「職人が1年も2年もかけて作るもの、世界に1個のものだから、違うブランドに似てるものはダメ、今までにあるようなものはもちろんダメ」とハイジュエリーのデザインの考え方に始まり、仕事の特異性と面白さ、また発想の源など、ハイジュエリーデザインの仕事の実際について紹介していただきました。ここではお見せできませんが、名和さんの貴重なデザイン画も見せていただきました。村瀬さんからは「デザイナーって華やかな仕事と思われがちだけど、内部調整とか事務的なことがものすごく多くて、職人さんに無理いってやってもらったり、人とのコミュニケーションする仕事」と仕事をする上でのデザイナーとしての共通点や、「日本人ということで信用してもらったり、面白がってくれたことを感じますね」(名和)と、ヨーロッパの中で日本人や日本文化がどう見られているか、といったところまで話は広がりました。「若いときに、自分の生涯をかけてやりたいと思うことに出会えたのは本当にラッキー」(村瀬)、「テクノロジーが進んでそっちが最先端と向かっていっていますが、そのカウンターとして世界中で手仕事が見直されてきているように思います。すごくこれからもチャンスがあると感じています」(名和)と話題は大きく広がりました。  質疑応答では、「デザイン画が立体になるとき思っているのと違う感じになることは?」「デザインするとき、実現可能なものから考えるのか、理想から考えるのか?」「目上の人や職人さんに自分の意見を伝えるとき、どんな点に気を付けているか?」「商品を手にするお客さんに、作品から感じて欲しいことは?」と、デザイナーとしての考え方や仕事のやり方、業務でありながらも自分のやりたいことなど、デザインの仕事を考えるうえでの有用なアドヴァイスをたくさんいただきました。「着心地いいとか、色が好きとか、気分がポジティブになるとかっていうところから買ってくださるのは大事。ただ、その先にある手仕事だとか、ものづくりにかかわった人だとか、産地だとか、そういったところまで想像してもらえるように今後も心がけていきたいです」(村瀬)と締めくくり講義は終了。地域の伝統産業が持つポテンシャルを感じさせ、可能性を感じさせる刺激的な特別講義となりました。

2024.6.13

テキスタイルデザインコース、尾州フェスにて作品を展示する「一宮モーニング」プロジェクト、キックオフ

テキスタイルデザインコース、尾州フェスにて作品を展示する「一宮モーニング」プロジェクト、キックオフ  テキスタイルデザインコースでは、一宮市から依頼を受け尾州産地の魅力をアピールするファッション・アートイベント「BISHU FES.」に参加。関連イベントである「まちなかアート展示」に、一宮モーニングをテーマに作品を制作し、本町通り商店街に展示します。  2024年6月3日(月)、プロジェクトに参加する学生は、キックオフとして一宮市役所を訪れBISHU FES.の概要、さらに一宮モーニング協議会から一宮モーニングについてのお話を伺い、作品の展示場所となる本町商店街を確認。さらに一宮モーニングのリサーチと、作品制作に向けて精力的に活動を開始しました。  プロジェクトには有志の学生7名が参加、いずれも尾州の繊維産業に関心を持つ学生です。はじめに一宮市役所で、産業振興課 鈴木課長、産業振興課 佐藤さんからBISHU FES.とまちなかアート展示についてお伺いしました。「今回の企画は、皆さんの尾州織物を使った作品を展示していただきたいと立ち上げたものです。一宮モーニングをテーマにイメージを膨らませて作品にしていただきたいと思います。良い作品ができるようサポートしていきたいと思います」とお話がありました。  引き続き、一宮商工会議所 企画事業部 西脇豊さんから、一宮モーニング協議会の活動についてお話しいただきました。一宮モーニングは、昭和30年代、織機の音が大きくて店では商談ができなかった機屋さんが喫茶店で商談するようになり、そうした中から生まれてきたサービスである、とモーニングの歴史からはじまりました。現在では、一宮市内に520店舗もの喫茶店があり、休日には朝食代わりに家族でモーニングを食べに喫茶店へ通う文化があるといいます。こうした身近な文化を背景に一宮商工会議所青年部が中心となり一宮モーニング協議会を発足、平成28年に「一宮モーニング」を地域団体商標へ登録して地域の知名度の向上と活性化を目標に活動しています。昨年は「2023年度 知財功労賞 特許庁長官表彰」を受賞するなど、地域ブランディングや観光事業として進められています。一宮モーニング協議会では、毎年、加盟する喫茶店を紹介する「一宮モーニングマップ」を制作、また、モーニングを盛り上げるイベントや異業種との連携、写真コンテストなど、さまざまな活動を行っており、それらの取り組みを紹介していただきました。  学生たちへ作品を作る上で気を付けて欲しいこととして「モーニングというとお得感や、この値段でこれだけのサービス、といった表現になりがちです。ですが、お店もぎりぎりのところでサービスを続けているので、競争や煽るようなことは避けて欲しいです。協議会ではお店のメリットになることを第一に考えています。そうしたところに気を付けて制作をお願いします」とお話がありました。また、一宮モーニング三ヶ条として、「一宮市内のお店であること」「たまご料理が付いていること」「できるだけ一宮産の食材を使うこと」の3項目を説明し、制作のヒントにして下さいと説明しました。  ミーティングの後、学生たちは実際に本町商店街に赴き、展示場所を確認しました。展示場所は、2022年の「」でも展示のポイントとなった、アーケード中心部のドーム部分。作品の大きさや、わかりやすいデザインが求められることなど、あらためて作品の基本的な部分を確認しました。  展示場所を確認した後は、リサーチのために一宮モーニングを体験しました。モーニング協議会の西脇さんに、夕方までモーニングを提供しているお店(笑)をご紹介いただき、皆で伺いました。メニューには、パンだけでなくおにぎりやたまごかけご飯、カレーライスまでモーニングのサービスにあり、それだけで大いに盛り上がります。小倉トーストやサンドイッチなどのサービスを楽しみながら、その特徴を理解しました。モーニングサービスは、出てきたときのボリュームや楽しさからか、なぜだか元気の出てくるサービスだと、あらためて気付かされました。  モーニングの楽しさ嬉しさが織物でどう表現されるか、ご期待下さい。 いちのみや芸術商店街

2024.6.5

テキスタイルデザインコース 有松絞りまつりでオリジナル手ぬぐいを販売、好評を博しました

テキスタイルデザインコース 有松絞りまつりでオリジナル手ぬぐいを販売、好評を博しました  テキスタイルデザインコースは、2024年6月1日(土)、2日(日)の二日間、「有松絞り手ぬぐいブランドプロジェクト」として有松絞りまつりに販売ブースを設け、学生がデザインし染色した手ぬぐいを販売、好評を博しました。  テキスタイルデザインコースでは、2009年から有松絞り産地と産学連携授業を実施、絞りの技法を学び、手ぬぐいをブランドの商品と見立てブランドイメージに合わせてデザインし制作、販売ブースは販売方法、包装やショッパーなども考え、実際に販売するという実践的な課題です。今年度は、「BLUEM」「お結び」「feeL」という3つのブランドを立ち上げました。  「BLUEM」は、青を基調としつつ、花が咲くことを表す“BLOOM”を合わせたスタイリッシュなイメージ、「お結び」は、人・文化・想いを結び付ける和食や日本文化がテーマ、「feeL」は色から感じる感情をテーマにしたカラフルな色合いの商品となっています。手ぬぐいのほか、同じデザインのアクセサリーや巾着袋など、ブランドごとに小物も販売します(→)。  販売ブースは、このプロジェクトで例年お世話になっているSuzusanが手がけるスーベニアブランドの「tetof 1608」の隣のスペースと好立地。また、やはり例年、染色でお世話になる「張正」さんの店舗でも販売させていただきました。また、今年からは張正さんの豆絞り手ぬぐいのB反(染めむらなどちょっとした難点のある二級品)にさらに模様を加えたアップサイクル商品も併せて販売しました(→)。 記事はこちら 記事はこちら  コロナ禍を経て多くの人が訪れる有松絞りまつりですが、今年40回目を数え特別なプログラムもあり、これまでにないほどの人出となりました。土曜日の午前中から、子どもを連れたファミリー層や浴衣のカップルを見かけることが多くなり、また、キッチンカーや屋台村の出店もあり、年に一度のお祭りイベントとして認知されてきたことを感じさせます。これまでは、端切れを求める“絞りファン”といったお客さんが中心でしたが、徐々に変わりつつあるという印象です。  販売ブースでは、開店と同時に調子よく売れていきます。1,800円という手ぬぐいとして他のショップと同等以上の価格設定ですが、足を止め商品を手に取る方がたくさんいらっしゃいました。中には、毎年買いに来るというお客さんもおられ、何枚もお買い上げいただいくこともありました。巾着袋も好評で、午前中に売り切れてしまったものもあるほど人気となりました。  メインの古い町並みから離れた張正さんの店舗には、張正ファンの目の肥えたお客さんがたくさん訪れます。こちらでは、板締めで藍色単色の商品と豆絞りのアップサイクル商品を販売します。学生たちはお客さんに声をかけ自分で染めたことやデザインのモチーフなどを説明、納得して非常に喜ばれていました。こちらでは通常の板締め絞りとは一風異なった学生の個性がよく表れたものが人気となりました 。売れ方を見ていると、お客さんと会話が弾み作品の背景を理解していただいたものがやはりよく売れます。商品の魅力もさることながら、商品の背景にあるストーリーや考え方が売れ行きにかかわるということを実感しました。  絞りまつりでは、テキスタイルデザインコース卒業生もさまざまな場所で出展、活躍しました。絞りの実習でもお世話になる「まり木綿」は、販売店舗を一旦閉め、工房での販売を強化するとのこと。店舗で販売する絞りまつりは今回が最後となり、惜しむようにたくさんのお客さんが訪れていました。  また、昨年に続き、今年も泉奈穂さんのブランド「」が旧山田薬局のA STORE HOUSEにて出店、こちらも人気を博していました。 Samio  2日目の日曜日は生憎の雨となりましたが、学生ブランドの「feeL」は完売、「お結び」「BLUEM」も概ね売り切ることとなりました。自分が作ったものをお客さんの手にとってもらうまでを体験する、プロジェクトを締めくくる有意義なものとなりました。 A STORE HOUSE まり木綿 張正

2024.5.14

先端メディア表現コース 空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」体験会と特別講義を実施

先端メディア表現コース 空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」体験会と特別講義を実施  2024年5月7日(火)、先端メディア表現コースでは、VR/ARコンテンツの企画・制作・運用を行うイクスアール株式会社 代表の蟹江真氏をお招きし、この2024年2月にアメリカで発売されたばかりの空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」をお持ちいただき、体験会と“XR”についての特別講義を行っていただきました。先端メディア表現コースの学生、メディアデザインの院生、またデバイスに関心のある講師も新しいデバイスを体験しました。  はじめに、蟹江氏が自己紹介と「XR講習 ~XRの初歩と今~」という題目でお話しいただきました。イクスアール株式会社は、これまでバーチャルトレーニングシミュレーター、産業向け実践教育XRなどヘッドセットを使ったコンテンツを企画制作してきた企業。代表の蟹江氏は、2014年に初めてゴーグルを使ったVR(仮想現実)を体験、仕事にしたいと感じ個人会社を設立、プロジェクトを立ち上げアイドルの撮影などさまざまなコンテンツを制作してきたといいます。マイクロソフトのHoloLensというシースルーのヘッドセットを使い、製造業や教育現場の作業手順やトレーニングを行うサービスの提供を行い、これまで本を読みイメージすることしかできなかったトレーニング環境を体験的に学べるようにしたり、現場でマニュアルやチェックシートを見ながら確認できるようにするなど、ヘッドセットを実社会で活用するような業務を行っています。  今回は、イクスアール株式会社から、まだ日本で発売されていない「Apple Vision Pro」を2台、さらに2023年10月に発売された「Meta Quest 3」も併せてお持ちいただきました。Apple Vision Proは購入のため蟹江氏がアメリカまで赴き入手した国内ではまだ貴重ものです。「XR」についての講義では、これまでの仮想現実と端末の進歩を簡単に説明していただきました。XR前提として、まず現実の世界RE(REAL ENVIROMENT)があり、そこにスマートフォンやタブレット、グラス型などの機器をつかい情報を付け加えて見せるAR(AUGMENTED REALITY 拡張現実)、逆に仮想の世界に現実のものを付け加えたAV(AUGMENTED VIRTUALITY 拡張仮想)、すべてが人工のVR(VIRTUAL REALITY 人工(仮想)現実)の4つがあり、仮想と現実を混在させるARとAVがMR(MIXED REALITY 複合現実)に分類されます。MRは仮想の世界に閉じるのではなく現実の世界と融合した世界であり、MRと仮想世界のVRをまとめ、現実では知覚できない新たな体験を創る技術の総称が、XR(EXTENDED REALITY)であると説明します。コンピューティングの進化とともに伸びてきた歴史があり、今後、さらに発展が見込まれれ、その最先端にあるのが現状ではApple Vision Proということです。  体験会では参加した学生がかわるがわるヘッドセットを装着、使用感を確認しました。視線の動きがカーソルになるためセットアップに手間がかかりますが、操作自体はAppleらしいインターフェースで使いやすく、ヘッドセットに慣れた学生は違和感なく使い始めていました。まだ利用できるアプリが少ないため、3Dフォトや動画を確認したり、ブラウザを操作する程度にとどまりましたが、操作のしやすさや画面の美しさや見やすさに可能性を感じるという声が聞かれました。また、Meta Quest 3も併せて起動し、使い勝手の違いを確認しました。先端メディア表現コースには、現在2台のMeta Quest 2があり自由につかえるようにしてありますが、新しいMeta Quest 3を体験した学生からは解像度に驚きの声が上がり、こちらも有意義なものとなりました。  今のところ、産業用の用途のほか、メタバースやゲームなどでコミュニケーションツールとして使われることの多いこうした機器ですが、新たな用途での可能性を感じさせる体験会と特別講義になりました。