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2024.7.19

テキスタイルデザインコース、尾州フェス「一宮モーニング」プロジェクト、宮田毛織を訪問、工場見学、生産打ち合わせ

テキスタイルデザインコース、尾州フェス「一宮モーニング」プロジェクト、宮田毛織を訪問、工場見学、生産打ち合わせ  テキスタイルデザインコースでは、一宮市から依頼を受け尾州産地の魅力をアピールするファッション・アートイベント「BISHU FES.」に参加、関連イベントである「まちなかアート展示」で、一宮モーニングをテーマにオリジナルテキスタイルを制作し本町通り商店街に展示します。2024年7月8日(月)学生は、一宮市のニット生地メーカー、宮田毛織工業株式会社様を訪れ、工場を見学させていただき、制作したい生地のデザインを見ていただきました。  「まちなかアート展示」では、各自1.5m×5mのオリジナルテキスタイルを展示する予定。尾州というと織物ですが、今回、3名の学生は“編み”であるニット生地を使った作品制作にチャレンジしています。ご協力いただくのが、国内でも有数の規模を誇る宮田毛織工業株式会社様。ウール、綿、化学繊維などさまざまな素材を使いニットを生産、世界の多くのアパレルメーカー、メゾンでも採用されています。  テキスタイルデザインコース 3年生の荒木望那さん、川松紗彩さん、清水咲和さんの3名が宮田毛織を訪れ、デザイン画とその源になっているコンセプト、作品のイメージとなるムードボードを手にプレゼンテーションを行いました。対応していただいたのは、取締役専務 宮田貴史さん、企画室 デザイナー 山田恵子さん、森山茉弥さんの3名。森山さんは、本学テキスタイルコース卒業生で学生たちとって直系の先輩にあたります。  プレゼンテーションに先立ち、宮田さんから宮田毛織の概要を説明していただき、工場を見せていただきました。宮田毛織は1954年創業、初期は毛織物も手がけていましたが早い段階でニット生地へと移行、現在は丸編み機を140台以上保有するニット生地専業メーカーとなっています。今回対応していただいたデザイナーの山田さん、森山さんを含め7名のインハウスデザイナーが在籍し、オリジナルの生地作りを行いアパレルメーカーへ提案できるところが強みであり、安価なアジア製品と競合しないウールなどを使った高級品を生産しています。国内外のアパレル、昨今では特にゴルフウェアのブランドへの提供が増えているとのことです。  工場見学では、実際に丸編み機が動いているところを見せていただきました。本社工場だけで100機ほどの丸編み機があるといいます。シングル、ダブルとそれぞれ編み方によって編み機が分けられ、なかには世界で数台しかない珍しい編み機もあるのだそう。印象的なのは資料室。これまで生産された数多くのサンプルが保管されています。流行は10年以上の周期でリバイバルするので、創業当時からのサンプルが必ず役に立つと、大切に保管されていました。  工場見学のあとは打ち合わせです。実際に業務での打ち合わせに使うさまざまサンプルが用意されている会議室で、まさに仕事さながらの打ち合わせとなりました。まずは学生が用意してきたデザイン画を説明、どんな色合いがいいのか、また質感やニット組織はどんなものを狙うか、など双方が出来上がりを具体的にイメージしながら素材や編み方を決めていきます。学生から、どんなイメージの作品にしたいかが丁寧に説明されました。荒木望那さんは、一宮の喫茶店でよく使われているウッディな内装とそこから受けるゆったりした温かみを表現し、ハワイ語で心地良いという意味の「Olu Olu」という作品。木目を感じさせる地に食べものを配置するデザインです。川松紗彩さんは喫茶店の温かみややすらぎを感じつつ、一宮モーニングのバラエティや楽しさをカラフルな色合いで表現した「Yippee」。清水咲和さんは、そのものズバリの小倉トーストとゆで玉子をモチーフとした「もぐっ」。ムードボードの写真も美味しそうです。  宮田さん、山田さんから、はじめにシングルニットとダブルニットの説明を受け、どちらを選ぶのか、まずそれを決めるように指示がありました。シングルニットは1列の針で編まれるシンプルな編み方でデザインの自由度が高くなり、ダブルニットは裏表を別に編み込む方法でシングルよりもふっくらした厚みの生地を作ることができデザインに合わせて表面に凹凸を作ることもできます。ただし、デザインに制約があり、学生3名のイメージしていたカラフルな柄を再現するために、ダブルニットの中でも5色の糸を使い分けられるフラットなジャカード生地での対応となりました。  次に糸ですがフラットな組織の中でも極力凹凸感を表現できるように川松さん、清水さんの作品はグランドに伸縮性のあるポリエステルを採用し、加工と糸の番手差で柄が浮き出るような手法を採用、荒木さんの作品は温かみを持たせたいという要望からウールを使用した冬っぽい糸素材を採用しました。  最後に色見本を見ながら、糸の色を決め、打ち合わせは終わりました。今回は納期が9月中旬となるため時間的に既製品の糸から選びましたが、糸を染色して自由に作ることも可能とのことで、高級ニット生地の世界の一端を感じることができました。  打ち合わせもまさに実際の仕事と同じような雰囲気で、学生にとって貴重な経験となりました。

2024.7.10

「愛知県×名古屋芸術大学連携事業 あいちアール・ブリュット作品展」 ギャラリートークを開催

「愛知県×名古屋芸術大学連携事業 あいちアール・ブリュット作品展」 ギャラリートークを開催  2024年6月14日(金)~25日(火)、西キャンパス Art & Design Center Westにて、愛知県との連携事業「愛知県×名古屋芸術大学連携事業 あいちアール・ブリュット作品展」を開催しました。最終日の25日には展覧会にご協力いただいた特定非営利活動法人愛知アート・コレクティブ、社会福祉法人あいち清光会障害者支援施設サンフレンドから関係者をお招きし、ギャラリートーク「アール・ブリュットの時代」を開催、学生をはじめ多くの観覧者で賑わいました。  この展覧会は、先に締結された「」に基づくもので、障害者アートに直接触れて理解を深め、自身の作品作りに生かすことや芸術の知識を生かした障害者芸術文化活動の支援者となることを目的として開催されました。会場のA&D Center Westには、山本良比古氏(1948-2020 絵画)、小寺良和氏(1957- 陶芸)をはじめとした、あいちアール・ブリュットを代表する作者15名の作品50点以上を展示、大規模な展覧会となりました。 愛知県と県内3大学との障害者芸術文化活動の推進に関する協定  ギャラリートークでは、はじめに愛知アート・コレクティブ代表理事 鈴木敏春氏からアール・ブリュットの歴史についてお話しいただきました。1928年(昭和3)千葉県に知的障害者施設「八幡学園」が創設され、そこに図工の時間が設けられたことが障害者芸術文化活動の始まりといいます。初代園長である久保寺保久氏が「裸の大将」として知られている山下清氏を見いだすなど大きな功績をあげ、障害者アートの世界が開かれます。久保寺氏の、それぞれが持つ良い点を伸ばそうと「踏むな、育てよ、水をそそげ」という言葉が非常に印象的です。愛知県では1952年(昭和27)に県内初めての特殊学級が名古屋市立菊井中学校に開設され、後に山本良比古氏の指導を行う川崎昂氏が赴任します。1980年代から徐々に社会的にも障害者アートは認知されるようになり、1999年(平成11)に「生(いのち)の芸術フロール展」、2007年(平成19)「第1回 ふれあいアート展」、そして、2014年(平成26)に「あいちアール・ブリュット展」が開催されます。鈴木氏は、第1回から企画・作品展示に携わり、障害のある人の表現は美術の世界を変えていくようなエネルギーを持っていると、アートの可能性に語り、これまでの取り組みについて紹介しました。  続いて、社会福祉法人あいち清光会障害者支援施設サンフレンド 末松グニエ モルヴァン氏、竹田印刷株式会社 アートディレクター 安井和男氏に、作品について解説していただきました。参加者とともに会場を巡り作者の経験やこだわりなどを説明し、作者を尊重しつつ作品として成立するようサポートする支援者としての立場も説明していただきました。参加者からの質問を受けながら、盛況な作品解説となりました。  展覧会に訪れたコミュニケーションアートコース 4年 石川清菜さん、浅井優菜さん、城所ななみさんには、次のような感想をいただきました。 「今回の展示を見て、どの作品も非常に個性的であると感じました。特に印象に残ったのは、小早川さんの作品です。彼女の作品は、自然や植物の爽やかさが感じられるものでした。色の使い方や重ね方が作品ごとに異なり、とても魅力的でした。私も小早川さんの技法を参考にし、色の重ね方を工夫してみたいと思います。」(石川清菜さん) 「整えられた線や形というより、スケッチのように、その時の感覚や景色がそのまま作品に落とし込まれている印象があり、その活き活きとした雰囲気に惹かれました。私は現在アニメーションを主に制作していますが、下書きやスケッチの線を活かしたような作風で今後制作してみたいと思いました。」(浅井優菜さん) 「展示会全体を鑑賞し、不自然な硬さも不自由さもない作品だと感じました。子供特有の柔らかな描写と、経験を積み重ねた技術力が両立した面白い作品ばかりで大変楽しかったです。その人その人のこだわりが分かりやすく、追求していく大切さを感じました。今回の展示会を通して、今一度作品作りの楽しさを胸に制作をしていきたいと思いました。」(城所ななみさん)  作者の気持ちや考えを素直に表しているような作品たちに、大きく刺激を受けたように感じられました。

2024.7.3

デザイン領域 中部文具工業組合「2024 文具デザインプロジェクト」最終審査発表会を開催

デザイン領域 中部文具工業組合「2024 文具デザインプロジェクト」最終審査発表会を開催  デザイン領域と中部文具工業組合加盟の文具メーカーとの連携プロジェクト、「2024 文具デザインプロジェクト」の最終審査発表会が、2024年6月5日(水)、シヤチハタ株式会社 本社会議室にて開催されました。今年の課題は、シヤチハタ株式会社「〇〇な仕事の人/〇〇な趣味がある人に役立つスタンプ・筆記具」、森松産業株式会社は「まもる・保護する+◯◯」の2つ。13名の学生・大学院生がそれぞれに課題に対し、プロダクトを考えて提案しました。  発表会に先立ち、担当する三枝樹成昭 講師、シヤチハタ株式会社 舟橋正剛 代表取締役社長から挨拶がありました。三枝樹講師は「学生さんそれぞれのバイトや体験したこと、また趣味など、そんな自分の経験から発想してデザインを提案して欲しいというものでしたが、難しかったのはないかと思います。自分の創りたいものよりも、それぞれの経験に基づくものが作品となっています」と学生それぞれの経験が生かされた提案であると説明しました。  シヤチハタ株式会社 舟橋正剛 代表取締役社長からは「名古屋芸大さんとのデザインコラボ、毎年、非常に楽しみにしております。今年の課題を読み返してみたら『〇〇な仕事の人/〇〇な趣味がある人に役立つスタンプ・筆記具』って、いわば何でも良いってことで、まとまっていない課題を出してしまって申し訳ありません(笑)。スタンプ系の商品は、BtoBがかなり成熟して行き詰まってきており、BtoCのバリエーションの広がりに期待がかかります。皆さんの感性を生かしたアイデアとデザインを楽しみにしています」とユーモアを交えながらもプロジェクトに期待する言葉をいただきました。  プレゼンテーションは一人10分程度で2案の説明を行います。サンプルやモックアップを作って来た学生もおり、熱のこもったものとなりました。評価については、①ターゲットは明確か、②シナリオは具体的か、③アイデアは魅力的か、④ユーザーが使いやすいデザインか、⑤発表がわかりやすかったか、と5つの項目で採点し最優秀賞1点、メーカー賞が2点が選ばれることになります。  プレゼンテーションは、緊張したしながらもユーモアを交えたものもあり、白熱したものになりました。それぞれ、自分の経験を基にした提案であるため質問にもしっかりと受け答えができ、いずれも非常に説得力のある提案となりました。なかには、審査委員から「今、商品企画で考えている案とそっくりで、どこかで漏れたのではないかと驚きました」との声も聞かれ、実際の商品と同じレベルでの提案であることがわかり、水準の高いものとなりました。提案をブラッシュアップしての商品化も視野に入れていることもあり具体的にお見せできないのが残念ですが、そのためもあってか審査員の質疑も真剣そのものです。トレーディングカードゲームや流行のスイーツを扱う提案などは、現在販売されている商品と世代的な差を感じさせるもので、その点だけでも学生が提案することに意義を感じさせます。  審査の結果、最優秀賞はシヤチハタの課題に対し、大学院 杉浦泰偲さんの「STAN PON」、メーカー賞 シヤチハタ株式会社賞はインダストリアル&セラミックデザインコース 柴田優否さん「テンポン」、メーカー賞 森松産業株式会社賞はカーデザインコース 久保田耀紘さん「メガネックレス」に決定しました。  最優秀賞「STAN PON」は、杉浦さんの建築現場で働いた経験が基になっているもので“墨出し”の作業を効率化し身体への負担を軽減する提案。シヤチハタ賞の「テンポン」も柴田さんがアルバイトで経験したレジの仕事を効率化する提案で、どちらもそれぞれの経験から発想されたものとなりました。森松賞「メガネックレス」は森松産業株式会社のプラスチック素材を上手く活用したおしゃれなメガネケースです。いずれのプレゼンテーションにも説得力があり納得の受賞となりました。  審査を終えて、森松産業株式会社 森直樹 代表取締役社長は「良いデザインのものを使うことで、仕事の効率が良くなったり使って気持ちが良かったり、使う人の気持ちを良い方向へ変えることができます。新しいものを生み出すことは、単に困り事を解決するだけではなく、感動を与えるくらいの大きな力を持っているのだと思います。このプロジェクトにかかわり、毎年、考えさせられますが、つくづくそう思います。今回でたアイデアからもヒントをいただき、実際の商品へと生かしていけるようにしたいと思います。今後も、ぜひご協力いただきますようお願いします。お疲れさまでした」と労いの言葉をいただきました。  シヤチハタ株式会社 佐藤旭 取締役からは「非常にレベルが高いものになったと思います。プレゼンテーションも非常に上手かったです。 ストーリー性があり単なるものだけのプレゼンというよりは、使用シーンを含め非常に説得力のあるプレゼンでとても良かったと思います。先生方がいろいろとご指導いただいた形が年々積み重なり、こういう形になってきてると思います。来年も引き続きよろしくお願いできればと思っております」と締めくくりました。  最後に三枝樹講師からは「ご評価いただいたのは、企業様から学校へ出向いていただきフェイストゥフェイスでお話しでき、プロジェクトの内容を正確に協議することができたおかげだと思います。こうした交流の積み重ねがあり、より確実なコンセプトの提案につながっているのではと感じます。今後とも、両者にとって実りのあるプロジェクトにしていきたいと思います。ありがとうございました」とお礼の言葉があり、最終審査発表会は終了となりました。

2024.7.2

インダストリアル&セラミックデザインコース、フジプレコン株式会社様との連携、工場見学と制作を体験

インダストリアル&セラミックデザインコース、フジプレコン株式会社様との連携、工場見学と制作を体験  インダストリアル&セラミックデザインコースでは、鉄道・道路で利用される側溝や電線などを収容するトラフなど、コンクリート製品を製造する企業、 フジプレコン株式会社様と連携し、コンクリート製品を製造する過程で発生する余剰分をリサイクルした、コンクリート製のプ ロダクト制作を行っています。昨年度は、考案したアイデアをプレゼンテーション、後藤ゼミ考案の「U字溝フォントとU字溝を使った文具」(U字溝をモチーフとしてアルファベットの立体で表札やPOPなどに使用)と、小林由奈さんの「チーズスタンド」(穴に筆記用具や歯ブラシを差し込んで使うチーズ型の置物)の2つを制作することと決まりました。(→記事は)  今年度はその2案を量産化すること、さらに商品バリエーションを増やすため新たな提案を行うことを目指します。2024年6月24日(月)、プロジェクトに参加する学生は豊橋市のフジプレコン豊橋工場を訪れ、コンクリートプラントと型にコンクリートを流し込んで二次製品を作る製造現場を見学させていただきました。 こちら  はじめに、松林克法 代表取締役社長から、フジプレコンの会社概要について説明していただきました。フジプレコンは鉄道製品が主力で線路脇の配線などを収納する側溝、遮断機などの基礎、また雑草対策のコンクリートマットなど、社会インフラにかかわる製品を数多く製造しています。SDGsにも積極的に取り組み、コンクリートを切断する際に発生する粉じんの問題、製造プロセスから炭素を出さない低炭素コンクリートの開発など、2042年のカーボンフリー化を目標に進めているといいます。  続いて、製造部の伊藤知美さんから、コンクリートの材料や成分、特徴などについて説明していただきました。コンクリートはセメントと水に「骨材」(砂利や砂など)を混ぜたもので、骨材がコンクリートの7割を占めているとのこと。骨材の分量と粒の大きさ、また、鉄筋など補強材の有無で強度など性質が変わり、用途に合わせて作り分けているとのことです。  次に、実際に工場を見せていただきました。まずは、コンクリートプラント。保管されている各種骨材がベルトコンベアで運ばれ、セメントと水を加え混ぜ合わせてコンクリートを作ります。計量などコンピュータで管理され、できあがったコンクリートはすぐに二次製品の製造ヤードへ運ばれます。ここで問題になるのが余剰コンクリート。コンクリートプラントの最下部にコンテナが置かれ、そこに余剰分のコンクリートが溜まります。1日に1トンほどの余剰が発生してしまうとのことで、これを活用しようというのがこのプロジェクトの目的です。二次製品の製造現場、また製品置き場では、その数量が印象的です。さまざまな形と大きさのコンクリート製品を製造していることがわかります。いずれも型を用意してそこへ流し込み固めるのですが、膨大な種類が用意されています。型に流し込んだコンクリートは、焼き物のように縮むこともなくそのままの形で凝固することも、よく理解できました。  工場見学の後、今度は実際にサンプル造りを体験しました。製造部 伊藤さんの指導の下、型にコンクリートを流し込みました。フジプレコンが運営するで販売されている、プレコンキューブと盆景プランター “ienami”の型を使います。  はじめに型をバラして丁寧に掃除し、隙間ができないようにしっかりと組み立てます。そこへ離型剤をスプレーして準備完了、コンクリートを流し込みます。流し込んだあと、軽くハンマーで振動を加えると、なかに含まれていた空気が泡として浮かびます。それらを取り除き、固まったら取り出します。固まるまで一昼夜かかるので体験はここまででしたが、固まったら取りだしバリを取り、表面をサンドペーパーで仕上げて完成となります。 PRECONSHOP  学生らは、今後3Dプリンターを使い「U字溝フォント」の原型を作ることになっていますが、伊藤さんがサンプルに作った「チーズスタンド」を見せていただきながら、原型を作るときの注意点を伺いました。チーズスタンドは、原型を基に伊藤さんがシリコンで型を取って作ったもの。穴の部分が難しいとのことで、コンクリートから引き抜くときに抜きやすいようテーパー(先細りになるよう傾斜)を付けて欲しい、外観部分はシリコン型を割って取り出せばよいのでどんな形でも大丈夫、と説明を受けました。これらを反映して、学生らは3DプリンターでU字溝フォントの原型を設計することとなりました。  伊藤さんの「コンクリートに触れてもらい、学生さんたちに素材として親しみを持ってもらえたら」という言葉が印象的でした。今後、もう少し製品種類を増やしたいと松林克法 代表取締役社長からの要望もあり、新しい提案も含めたくさんの課題が見えた実りの多い工場見学となりました。

2024.6.5

カーデザインコース、朝日電装株式会社様と連携、新しい2輪車の操作系デザインを考えるプロジェクト、キックオフ

カーデザインコース、朝日電装株式会社様と連携、新しい2輪車の操作系デザインを考えるプロジェクト、キックオフ  カーデザインコースでは、オートバイや水上バイクなどで使用されるハンドルスイッチを製造する朝日電装株式会社様と連携し、「2輪車における新しいインターフェース」というテーマでプロジェクトを行います。2024年5月23日(木)、プロジェクトキックオフとして、朝日電装から製品開発に携わる水野孝義さん、水野直紀さん、三浦誠さんの3氏をお迎えし、2輪車、3輪車、電動キックボードの実車、操作スイッチのサンプルとして2輪車、4輪バギー、水上バイク、船舶用などをお持ちいただきました。プロジェクトの概要と目的、基本的な2輪車の実情をお話しいただき、電動キックボードの試乗体験も行いました。  プロジェクトには、カーデザインコースの3年生12名が参加。8月1日の最終プレゼンテーションに向け、約2ヶ月の間にアイデア出しからモデリングまでを行うスケジュールです。朝日電装の水野孝義さんは「魅力的なアイデアがあれば共同開発を進めさせていただき、来年のジャパンモビリティショーに出品して世に問いたい!」と意気込みを語り、夢のあるプロジェクトであることを強調しました。  朝日電装株式会社の紹介と、学生の自己紹介から講義が始まりました。お越しいただいた水野直紀さんは電気とメカ混合設計が専門、三浦誠さんは電子スイッチを使いゲームコントローラーを制作する新しいもの好きの技術者です。そして水野孝義さんは長年バイクの設計を行っていた技術者で、多くのバイクを手がけていらっしゃいます。  朝日電装については、ヤマハをはじめ、スズキ、ホンダ、カワサキといったバイクメーカーと深い関わりがあり、2輪車・自動車・特機(農機・建機)・船舶(ボート・水上バイク)等の分野で、操作する人と乗り物のインターフェースを設計、製造、販売しています。会社設立当初からヤマハのオートバイのスイッチを手がけており、1950年代のオートバイのハンドル部分の写真を掲示し、この頃から操作系の基本形態は大きくは変わっていないと説明がありました。但しスロットルに関して、技術的にはワイヤーを使って接続していたメカニカル方式から、センサー技術を活用した(APS:アクセルポジションセンサー)電子スロットル方式へと変わってきており、現在では設計自由度もかなり高くなっているとのことです。  バイクに乗っている、あるいは、乗っていたことのある人という問いかけに、経験のある学生は1名だけでした。そのため、バイクについての基本的な講義から始まりました。まずは2輪車の種類について、縦軸に実用性、横軸に乗り味を置き、実用性が低くスポーティな乗り味のスーパースポーツやカフェレーサー、逆に実用性が高く乗り味がのんびりとしたものがスクーターやビジネスバイクと区分し、アメリカン、ネイキッド、ツアラー、オフロード、スクランブラー、アドベンチャー、ストリートなど、現状のバイクの区分についても紹介し、それぞれの乗り方について運転姿勢を解説しました。  操作することを、五感から受けた感覚を脳で判断し意志や感情に従って操作するという視点で分析し、バイクの操作系インターフェースが過去から変わっていない理由について考察が行われました。さらに、4輪ある自動車との操作の違いを意識し、考えを深めました。また、バイクと同じようにハンドル部分で操作する4輪バギーや水上バイクの操作系を説明し、バイクとの違いについても考えました。4輪バギーは親指でスロットルレバーを操作し、水上バイクは自転車のブレーキのように人差し指・中指でスロットルレバーを操作します。学生らは、用意されたサンプルを手に取り、なぜバイクと異なる操作系なのか、どういった状況で使う乗り物かを考察し、ディスカッションを行いました。  後半では、電動キックボードの試乗を行いました。今回用意いただいた電動キックボードは、親指でスロットルレバーを操作するタイプでした。学生たちは実際に運転して操作系を体感し、乗り物の楽しさと同時に、普段何気なく使っている道具と身体のかかわりを考え直す有意義な試乗会となりました。  再び教室に戻るとディスカッションを再開し、忌憚のない意見交換が行われました。サンプルのスイッチの感触を確かめたり、2輪車に跨がってみてグリップを握ってみたりする中で、それぞれがインターフェースについての考えを深めました。小柄な女性では、現状のバイクの操作系でも扱いづらいことが分かるなど、さまざまな発見もありました。  今回の講義のまとめとして、水野孝義さんから「2輪車のインターフェースをあらためて考え直す」「運転して楽しい、気持ちいい、新しいを提案」「デザインの力で新しいものへと進化させて欲しい」「APSの活用」「良い提案は共同開発としてジャパンモビリティショーに出品して世に広めたい」との言葉があり、プロジェクトキックオフは終了となりました。  次週からはアイデア出しを開始し、定期的に朝日電装様にも参加いただきながら、8月の最終プレゼンテーションまで進めていくことになります。

2024.4.26

デザイン領域 中部文具工業協同組合「2024 文具デザインプロジェクト」キックオフ 説明会を開催、課題を発表

デザイン領域 中部文具工業協同組合「2024 文具デザインプロジェクト」キックオフ 説明会を開催、課題を発表  2024年4月10日(水)、デザイン領域と中部文具工業協同組合加盟の文具メーカーとの産学連携企画「2024 文具デザインプロジェクト」のキックオフミーティングとして、シヤチハタ株式会社様から、商品企画部 滝沢一部長、田中絵里香課長、入江弘士郞さん、森松株式会社様から 森直樹 代表をお招きし、説明会を開催しました。  文具デザインプロジェクトは例年行われているもので、3年次までに習得したデザイン技術や知識を用い、商品や製品の企画、調査、開発、製造、販売までを見据えデザイン提案を行うもの。実際にこれまでの優秀作品が製品化されたこともあり、学生はもちろん企業にとっても非常に大きな意味を持つプロジェクトです。インダストリアル&セラミックデザインコース、カーデザインコース、大学院から13名の学生、院生が参加、シヤチハタ株式会社、森松株式会社、2社それぞれの課題にデザインを提案することとなります。  課題の発表に先立ち、担当する三枝樹成昭 非常勤講師からプロジェクトについての説明がありました。  「シナリオ、コンセプト、詳細デザイン、そして最終デザインと、一連のプロセスと商品化とへの流れ中で、それぞれに企業様からフィードバックを受けながら進めて行きたいと思います。ユーザーシナリオを考えて、誰がどのようなシチュエーションでどう使うのか、そういったことをきっちり説明ができるような商品提案をしていただきたいと思います」と説明しました。  続いて、森松株式会社 森社長から、課題の発表と会社の紹介がありました。課題は「まもる・保護する+◯◯」。森松株式会社は、塩化ビニールシートを使ったデスクマットやコロナ対策のパーティションなど樹脂製品の製造を行う会社。ファイルケースやカバーなど収納や保護に使うオリジナル商品もありますが、そこになにかプラスアルファの機能を提案して欲しい、と説明しました。  シヤチハタ株式会社からは、商品企画部 滝沢部長から会社の概要、入江さんから課題の説明、田中さんから過去の優秀作品の紹介がありました。課題は「〇〇な仕事の人/〇〇な趣味がある人に役立つスタンプ・筆記具」。学生らに、アルバイト先での困りごと、趣味で何かしているときにあったら便利なものなど、ユーザーとして自分のことを想像してみて、アイデアにつなげて欲しいと説明しました。  課題の説明のあと今度は学生が、アルバイトや今はまっている趣味についてなど自校紹介を行いました。打ち解けてきたところで、シヤチハタ 入江さん、田中さん、森松 森社長が自社のサンプルを手に各テーブルを回り、学生からの質問に答えたり、アイデアについて談笑しました。その場から学生はアイデアスケッチを始め、プロジェクトが本格的にスタートとなりました。  今後、両企業のご担当の方には、隔週で学校にお越しいただき学生からの相談や進捗を確認、6月5日に最終プレゼンテーションとなります。2ヶ月間という短いスケジュールですが、今年はどんなアイデアが提案されるか、期待が高まります。

2024.3.22

インダストリアル&セラミックデザインコース、フジプレコン株式会社様と連携、コンクリートを使ったプロダクトを提案

インダストリアル&セラミックデザインコース、フジプレコン株式会社様と連携、コンクリートを使ったプロダクトを提案  インダストリアル&セラミックデザインコースでは、鉄道・道路で利用される側溝や電線などを収容するトラフなど、コンクリート製品を製造する企業 フジプレコン株式会社様と連携し、コンクリート製品を製造する過程で発生する余剰分をリサイクルした、コンクリート製のプロダクトを考案しました。12月にアイデア出しを行い、中間プレゼンテーションを経て、2024年3月5日(火)フジプレコンの皆さまをお招きし、最終プレゼンテーションを行いました。コンクリートの質感や重量、自由な形に造形できるといった特性を考慮し10名の学生が12のアイデアを提示、3Dプリンターを使って制作したモデルとともに説明しました。学生らしいユニークなアイデアあふれる楽しいプレゼンテーションとなりました。  学生ひとりひとりが、モデルを手渡しコンセプトを説明、5分程度の簡単なプレゼンテーションを行いました。提案は、デスク周りで使える文房具やティッシュボックスなどのグッズ、コンクリートの重さを生かしたブックエンドやドアストッパー、手触りや質感に着目したマスコット、屋外で使えることを利用した鉢植えなど、さまざまなアイデアが出されました。フジプレコンの製品であるU字溝をモチーフにした作品や、犬やキャラクターなどをモチーフにした可愛らしい作品には、発想に感心する声も聞かれました。中間プレゼンからのアップデートに加え、実寸のモデルを目にするとコンクリートで制作することを考えている様子で、手応えを感じます。  プレゼンテーションを終え、フジプレコン株式会社様の選考により、最優秀賞に後藤ゼミで考案した「U字溝フォントとU字溝を使った文具」が選ばれ、代表者として山本遙奈さんが賞状を受け取りました。優秀賞にはコンクリートの重さと形を利用した小林由奈さん「チーズスタンド」が選ばれました。最優秀賞の「U字溝フォント」はU字溝をモチーフとしてアルファベットの立体を作り、表札にするなどさまざまに活用できるようにするアイデア。小林由奈さんの「チーズスタンド」はチーズの形をした置物で、穴に筆記用具や歯ブラシを差し込んで使います。「コンクリートの重さを生かしつつ、可愛くて身近に感じられるものを考えました」と説明しました。  講評として松林克法 代表取締役社長から「若々しい皆さんのアイデア、とても楽しく拝見しました。弊社だけではデザインの発想に頭打ちで、どう進めていけばいいものかと思っていました。もっと早く相談すれば良かったと感じています。今日のプレゼンテーションを見て、また新しいことに挑戦できるなと思いました。優秀賞の2つは、さらに研究を進めていきたいと思います」と今後の商品化が期待できるコメントをいただきました。  担当のデザイン領域 後藤規文教授は、「ただ単に飾るだけでなく、実用もできノベルティとして価値の高められるものができれば面白いと考えています」とコメント。松林代表取締役社長からは、ぜひ、一度、会社を見に来て下さいとの言葉がありました。サンプルとしてモデルと3Dデータをお渡しし、継続してプロダクト化を目指すことになりました。 最優秀賞 U字溝フォントとU字溝を使った文具 (代表者)山本遙奈さん 優秀賞 チーズスタンド 小林由奈さん

2024.2.29

株式会社ファーストとデジタルサイネージの新たな用途開発、卒業制作展でプロトタイプを展示

株式会社ファーストとデジタルサイネージの新たな用途開発、卒業制作展でプロトタイプを展示  株式会社ファースト様との連携で進められている新しいデジタルサイネージの用途・形のアイデアを創出するプロジェクト、2023年度前期ではインダストリアル&セラミックデザインコース、カーデザインコースの4年生、大学院デザイン研究科の1年生が参加し、新しいデザイン案を提案しました(プレゼンテーションの様子は)。  プロジェクトの後期では、インダストリアル&セラミックコースの2、3年生13名の有志がスケールモデルを制作、それをもとに株式会社ファースト様にてプロトタイプを製作、卒業制作展で披露することとなりました。  当初の予定では、前期のデザイン案をスケールモデル化しようと想定していましたが、実際にプロトタイプまで製作することを考慮して実現可能性の高いデザインに落とし込み、サイネージの外観部分のデザインを考案しました。学生らしい自由なアイデアがあふれるユニークなものとなりました。 こちら  モデルの制作にあたり、設置される場所と表示されるコンテンツを想定し周辺に馴染むようなデザインを再検討。ID/CDコース所有の3Dプリンターやレーザーカッターを活用してスケールモデルを制作し、できあがったモデルをファースト様にプレゼンテーション。6つのデザイン案を実際にプロトタイプとして製作していただきました。  デザイン案は、モニターの存在をぼかすことを目的としたフレームを感じさせないデザイン、商品のディスプレイとしても使える家具のようなデザイン、柔らかな素材と組み合わせたソファーのようなデザイン、基本となるベーシックなディスプレイに着せ替えパネルを組み合わせて使える和風組子パネル、マンガの集中線がユーモラスな漫画パネル、柔らかな人工観葉植物を使った葉っぱパネル、と3つの案と着せ替えパネル3つの6種類。製作されたサイネージは、実際に卒業制作展の案内に使用しています。  指導したデザイン領域 後藤規文教授は「今回、サイネージの枠を意識させないようなアイデアが中心となりました。周辺の環境に馴染むように、透かしにしたり植物を取り入れたり、サイネージの存在を軽くするようなアイデアです。広告が中心となるサイネージでは、通常では採用できない、どちらかというと目立たせなくするようなアイデアです。それでも環境にマッチするという視点で提案ができ、すごく面白いものができたのではないかと思います」と手応えを感じている様子でした。新しいアイデアの提案という難しい課題に対し、学生らしいユニークで価値のある提案となりました。

2024.2.27

古川美術館と「連携・協力に関する協定」を締結

古川美術館と「連携・協力に関する協定」を締結  2024年2月6日(火)本学と古川美術館は「連携・協力に関する協定」を締結、協定締結式を古川美術館 分館爲三郎記念館(旧古川爲三郎邸) 桜の間にて開催しました。協定の概要は、古川美術館と本学が包括的な連携のもとに、地域活性化、産業振興、学術文化振興等の分野で相互に協力し、地域社会の発展や協働のまちづくりを推進すること、本学の教育・研究及び優れた人材の育成に寄与すること、を目的とするものです。締結式では川村大介理事長、公益財団法人古川知足会 古川美術館 古川爲之理事長が、協定書に署名しました。  協定締結式には、本学から川村大介理事長、濱田誠経営本部長、田中聰地域・社会連携部長、古川美術館からは古川爲之理事長、伊藤洋介館長代理兼事務局長、河田秀子館長秘書・事務局、早川祥子主任学芸員が参列。伊藤洋介氏の進行のもと、しめやかに式典が執り行われました。会場となった爲三郎記念館には、この日から公開となった本学の展覧会「古川美術館プロジェクト メイゲイのコウゲイ」の作品が展示され、式典に併せ、早川学芸員の解説のもと関係者が鑑賞しました。  川村理事長は「学生たちの作品を見せていただき、ほっとするような温かな気持ちになりました。連携協定の意味はその通りなのですが、実際にこの数寄屋造りの建物に入りますと、彼らは本当に貴重な経験をさせていただいたのだなと肌身で感じました。この連携が、関係する者にとって喜ばしく良きことにつながるようにと思います」と祝福の言葉を述べました。  古川理事長からは「過去、名古屋芸術大学の先生方にはお世話になっておりまして2000年に始めた若手作家展シリーズの第一回に長谷川喜久先生、瀬永能雅先生にご出展いただいたように記憶しております(2000年「岩絵の具の可能性を求めて~名古屋発、若手作家からの提言」)。今では教授としてご指導いただいているかと思うと感慨深く、また、今日でも展覧会などでお世話になりご縁が深いなと感じております。現在、国内外さまざまなことが起きています。天災、パンデミック、さらに理不尽な戦争……、そうした今だからこそ芸術文化というものが一層大切に思われます。名古屋芸術大学に少しでもお役に立てれば、これまで以上に協力しあえればと思っております」とお言葉をいただきました。  式典の終了後も歓談は続き、終始和やかな締結式となりました。 「古川美術館プロジェクト2024 メイゲイのコウゲイ」制作プランのプレゼンテーション 「古川美術館プロジェクト2024 メイゲイのコウゲイ」最終発表会を実施 古川美術館プロジェクト2024「メイゲイのコウゲイ」を開催 古川美術館と「連携・協力に関する協定」を締結